福島の第一原子力発電所事故から9年が経とうとしている。今でも事故現場周辺は立入禁止となっており、そこで暮らす人間は誰もいない。
米ジョージア大学が最近行った研究によると、人が住まなくなった避難地域では膨大な種類の野生生物が繁殖していることが明らかとなった。
その間、自然と動物たちは人間に奪われた土地を取り戻そうとたくましく生きてきたようだ。
スポンサードリンク
Wildlife captured on video in Fukushima
人の立ち入りが制限された区域で20種の動物が確認される
今回調査の対象となったのは、原子力発電所周辺にある「放射能汚染がもっともひどく人間が立ち入れない区域」「中程度の汚染レベルで立ち入りが制限されている区域」「背景放射はあるが滞在が許可されている区域」の3ヶ所だ。
この区域に106台のカメラを設置し、120日間で撮影された26万7000枚の写真を分析したところ、イノシシ、ニホンノウサギ、ニホンザル、キジ、アカギツネ、タヌキといった20種が「人が住めなくなった区域」で確認された。
イノシシなどは、人間が支配している地域に比べて、4倍も生息数が多く、おそらくはこれまで利用できなかった資源を手に入れられるようになったことが原因だろうという。
動物の生息数に最も影響を与えていたのは人間の活動
分析の結果、放射線レベルは、動物の生息数や分布にほとんど関係がなかったそうだ。
それよりも人間の活動レベルや動物のテリトリーが影響を与える主な要因であることが判明している。人間が活動していない地域であればあるほど、動物たちは繁殖していたのだ。
唯一の例外はニホンカモシカだだ。警戒心の強いニホンカモシカは、普通なら人間に近寄ることを好まないが、少なくとも今回の調査では、人が暮らす地域に仕掛けられたカメラの前に姿を現していた。
その理由について、研究者は、避難区域にはイノシシが多かったため、種の競争が激しいためではないかと推測している。
人が消えた地域は野生動物の楽園になる
これまで動物の存在や健康状態を対象とした調査はあったが、今回のように全体的な生息数を対象とした調査は数少ない。
研究者によれば、こうしたデータは、人間の存在が放射線より動物の生息数に影響を与えることを示すユニークな科学的知見であるそうだ。
今回の研究では、動物の健康状態は調べられていない。とはいえ仮に放射線による健康への影響があったのだとしても、少なくとも全体的なレベルで確認できるものではないし、長期的な個体数にも影響はないようだ。
なお、似たような現象はウクライナのチェルノブイリでも確認されている。こちらは現在、ヒグマ、バイソン、オオカミ、オオヤマネコ、モウコノウマといった哺乳類や200種を超える鳥類が生息する野生生物の楽園になっている。
この研究は『Frontiers in Ecology and the Environment』に掲載された。
References:Study shows animal life thriving around Fukushima/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
チェルノブイリで生まれた子犬たちを保護し、飼い主探しに尽力するアメリカのボランティア団体の活動
野生の王国となったチェルノブイリ、オオカミたちが繁殖し生息域を広げつつある(ウクライナ)
悲劇の原発事故から33年。チェルノブイリは今、野生動物たちの王国へ(ウクライナ)
福島警戒区域で「動物たちの命を全うさせる」生き方を選んだ男性の物語
チェルノブイリで育った放射線を好む菌類、宇宙ステーションへと運ばれる
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「動画」カテゴリの最新記事
「動物・鳥類」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 11376 points | 橋の手すりを覆い尽くす衣類。ホームレスを厳しい冬から守るために地域住民が持ち寄って支援(スコットランド) | |
2位 9147 points | 2枚のコンピューターチップ間で初の量子テレポーテーションに成功。情報を瞬間転送(英・デンマーク共同研究) | |
3位 2378 points | 試される僧侶。猫の思いっきり甘えるの攻撃に耐えられるか?(タイ) | |
4位 2102 points | 散歩に出かけた犬が、子猫を連れて帰って来た件(アメリカ) | |
5位 1368 points | インドの大学で初の「幽霊学」コースが開講。医師らが“アーユルヴェーダ”を用いた心理障害の治療を学ぶ |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
もののけ姫のイノシシ思い出したよ
2. 匿名処理班
別に無害なんだよね。一部がうるさいだけで
クレームがあると閉鎖しなきゃいけないのは公園も被災区域も同じ
思い込みやテレビの煽動で心配するなら、生活習慣を改善した方がよっぽど長生きできますよって人は多い
3. 匿名処理班
チェルノブイリもだけど人間が一番迷惑という
4. 匿名処理班
しかもこいつら世代を重ねて、人を知らない種で人を恐れないとか聞いたわよ。
5. 匿名処理班
動物は放射線なんか知らないし人間が少ない場所で増えるのは道理だろうね。
6. 匿名処理班
椅子取りゲームだからな
人という種が椅子を取ったら他は座れまいて
7. 匿名処理班
ジョージア大学が研究してたのにビックリ!
8.
9.
10.
11. 匿名処理班
核戦争が起きた後の世界でもきっと動物はしれっと生き残ってる
12. 匿名処理班
これはせめてもの救いと考えていいのだろうか
13. 匿名処理班
放射線が動物に与える影響は一律ではなく、人間より耐性強い動物もいるし、影響受けても弱い個体は淘汰されて丈夫で強い個体が生き残り、より強くなってる事も考えられる。
というか動物にとっては放射能より人間の方がよっぽど害が大きいという事を突きつけられた感じ。
14.
15. 匿名処理班
もしこの瞬間人間が一人も居なくなったら、20年経つだけで都市部もジャングルと化して地球は瞬く間に植物に支配されるらしいね
16. 匿名処理班
人がいなくなったらどうなるかって既にわかってたことだしなぁ
17. 匿名処理班
ニホンカモシカは日光行くといるけど警戒心あんまりない感じするけどなあ
全然逃げないしぼーっとしてるしいつものそのそ歩いてる
18. 匿名処理班
原発事故が起きても、人間が転居を強いられるだけで自然や動物たちにとっては良かったと思えることなんだな。
突然変異さえなければ、自然環境にとってはむしろ良かったんじゃないか
19. 匿名処理班
被災して孤立した村や町に住んでる人が、最近野生動物が増えて困ってるって言ってたけどさ、正直野生動物を駆除しようとするんじゃなくて人が移動すれば?って思ってしまったよ。
現実問題として難しいのは承知してるけど、他の動物を押しやって場所を奪ってるんだから、人の数が少なくなれば押しやられるのも自然の摂理だと思うもん。
20. 匿名処理班
※2
汚染が酷い地域に関しては普通に有害だぞ。
実害がないレベルのものに関してまで過剰に騒ぎ立てるのは良くないが、無害と言ってしまうのもまた違う。
21. 匿名処理班
人間がいなくなったので動物が元気に大繁殖しただけじゃん
放射線の影響?何ソレ
22. 匿名処理班
不思議な感動をおぼえる反面なにか切ない気持ちになる
この地球上に存在する人間以外の存在にとっては、放射能より人間の方が余程"危ない"のかもしれない
結局、「人間だけ」なのかなぁ...
23. 匿名処理班
飼われてた動物は繁殖してないのかな
野生動物は放射能で1割減ろうが影響ないけど、人間だと0.01%減っただけでも大きいな影響があるといわれる
24.
25. 匿名処理班
真っ先にチェルノブイリを連想した
一部の人々が汚点と罵る場所は、動物たちの楽園なんだ
汚れてるのは人間の方だと再認識する
26. 匿名処理班
※13
でもその淘汰自体が自然下ではありえない淘汰の仕方なのでその影響が今後どう出るかは分からない
27. 匿名処理班
福島産農産物の風評をなくす客観的なデータを沢山取れると思うわ
28. 匿名処理班
乙事主が出てきそうだな。
29. 匿名処理班
※20
そんな事言ったら無害な場所なんてこの世界のどこにも存在しない
酸素だって猛毒なんだからな
30. 匿名処理班
国敗れて山河あり
31. 匿名処理班
>>23
野生化した犬や猫もいるにはいる
ただ人に飼われた経験があると人のいる方に行くのと繁殖力はそんなに強くないから徐々に減ってる