「死せる孔明生ける仲達を走らせる」
明治12年(1879年)4月17日の朝日新聞に掲載された「死せる孔明生ける仲達を走らせ……」という中国の故事からはじまる記事によると、4月12日、香川県多度津町から大阪府の川口波戸場へ向かう
蒸気船の乗客名簿に「西郷隆盛」および「桐野利秋」の2名の名前が記載されているのを大阪府の警察署が発見した。
西郷隆盛は2年前の西南戦争で鹿児島市城山町で自害。西郷の遺体は浄光明寺跡に埋葬され(現在の南洲神社の鳥居附近)後に南洲墓地に移されている。
もうひとりの
桐野利秋は西郷とともに西南戦争を戦い、西郷の死後、さらに進撃したが死亡し、西郷と同じ南洲墓地に埋葬されている。
そんな二人が、まさか生き延びていたなんて……。
当時、大阪では「西郷隆盛は死んでおらず生きている」という噂話が広まっていたこともあり、警察署はてんやわんや。すぐに川口波戸場へ飛び、西郷隆盛および桐野利秋の2名を確保すべく動き出したのである。
大パニックの波止場
突然、警察がやってきたことで波止場は大騒ぎ。他の波止場の乗客も「西郷どんが生きていた?」という噂を聞きつけた野次馬も現れ、押すな押すなの大騒ぎになった。
「誰一人、波止場から出るな!」
という号令のもと、乗客の一斉点検がはじまった。警察署は名簿を元に西郷隆盛および桐野利秋を血眼になって探した。
しかし、名簿と顔を突き合わせても、二人の志士は見つからず、最終的にこの二人の名前が名簿にあったのは、ある乗客による
イタズラの可能性が高いことが判明した。
警察署は大目玉を食らったことは想像に難くない。
大政奉還から数年しか経っていない明治12年。当時の新聞には江戸時代の記憶が鮮明に刻まれているのである。
参照:朝日新聞
文:
穂積昭雪(昭和ロマンライター /
山口敏太郎タートルカンパニー /
Atlas編集部)
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