男「イートインで食べるので消費税8%じゃなく10%でお願いします」女店員「あなたのような正直な方……好きですよ」
男(お茶と、弁当と菓子パンと……)
男「お願いします」
女店員「はい」ピッピッ
男「あ、あの」
女店員「どうしました?」
男「イートインで食べるので消費税8%じゃなく10%でお願いします」
女店員「まぁ、正直なお方……」
女店員「あなたのように正直に申告する方ははじめてです」
女店員「消費税8%で買った品物を、堂々とイートインで食べる人ばかりでしたから」
男「あ、そうなんですか」
女店員「あなたのような正直な方……好きですよ」クスッ
男「!」
男「ありがとうございます!」
男「……」ゴクゴク
男「……」モグモグ
男「……」パクパク
男(正直な方好きですよ、か)
男(あんなこと言われたのはじめてだ……)
女店員「いらっしゃいませ」
男「えぇと、今日もイートインを利用するので、消費税は10%でお願いします!」
女店員「かしこまりました」
女店員「本当に……正直な方なのですね」クスッ
男「……!」ドキッ
男(ここにはちょくちょく通うことにしよう……)
課長「バカ野郎がッ!」
男「……ッ!」
課長「むざむざ競合に出し抜かれやがって!」
課長「営業っつうのはな、時にはウソついたり、出来ないことも出来るっていってみたり!」
課長「そうやってギリギリの駆け引きしながらやってくもんなんだよ!」
課長「バカ正直なだけでサラリーマンやってけると思うなよォ! このバカ!」
男「申し訳ありません……!」
男(はぁ……今日も叱られっ放しだった……)
女店員「いらっしゃいませ」
男「あの、イートイン使うんで……」
女店員「10%ですね?」
男「は、はい」
女店員「相変わらず、正直で素晴らしい方ですね」
男「そうでしょうか……」
女店員「何か……お悩みのようですね」
男「えっ!」
女店員「顔に出てますよ。あなたは正直ですから」
男「あ、いや、これは……」
女店員「私ももうすぐバイトが終わります。よかったら、この後お酒でもいかがです?」
男「は、はいっ!」
男(なんだこの展開、夢じゃなかろうか……)
男「……」ゴクゴクゴク
男「ふぅー……」
女店員「どうなさったんです?」
男「君は……俺のことを正直者だと褒めてくれたね」
男「だけど俺は、全然褒められるような人間じゃないんだ」
女店員「どういうことですか?」
男「親からは正直に生きろ正直に生きろっていわれて育ったし、自分でもそうやって生きてきたつもりだ」
男「ウソついたり、隠しごとをしたり、誇張したりってことをしたことがほとんどない」
女店員「素晴らしいことです」
男「だけど、正直が通用するのはしょせん子供の頃だけ」
男「大人になって会社入ったら、正直さが災いして損したり怒られることばっかり……」
男「正直なんて全然いいことじゃないんだよ。まさに正直者はバカを見るってやつさ」
女店員「……」
男「!」
女店員「あなたのように、私も正直に身の上を話しましょう」
女店員「私は母子家庭で育ち、母は苦労して私を育ててくれました」
女店員「高校を卒業して、お金を稼ぐためにやっと都会に出てきてみたら――」
女店員「周囲は自分のためなら平気でウソをついたり隠し事をして、他人を陥れようとする人ばっかり」
女店員「私もそういう人に何度も何度も騙されて……」
女店員「だけどあなたは違う!」
男「!」
男「そんな大げさな……」
女店員「大げさなんかじゃありません!」
女店員「ねえ、今度一緒にデートに行きませんか?」
男「えっ」
女店員「お互いのストレス発散になるでしょうし、いいでしょ? ね?」
男「うん……行こう!」
男(そろそろ待ち合わせ時刻だけど……)
女店員「お待たせ~!」
男「!」ドキッ
男「私服の君も……とてもキレイだよ」
女店員「ふふっ、ありがと。さ、レッツゴー!」
サル「ウキキキ……」ピョンピョン
女店員「わぁっ、可愛い~」
男「うん、癒やされるよ」
女店員「動物はいいよね。みんな正直者で」
男「ホントだね」
サル「ウキ……」ケッ
男「あ、愛想振りまくのも疲れるぜ、って顔してる……」
女店員「動物も案外正直じゃないのかもね」
女店員「愛こそ~♪ 全てなのよ~♪」
男「よかったよ!」パチパチパチ
女店員「ありがとう!」
男「だけどサビの高音が出てなかったね」
女店員「そこは正直に言わないで欲しかった」
女店員「今日は楽しかったわ」
男「俺もだよ」
女店員「またコンビニに来てね。それと……また一緒に遊ぼうね」
男「もちろん!」
女店員「……」
男「どうしたの? ずいぶん落ち込んでるけど」
女店員「落ち込んでなんか……いないって」
男「いや……俺には分かるよ。君がなにか悩んでるって」
男「話せる悩みなら……打ち明けてくれないかな?」
男「前、君は俺の悩みを聞いて、元気づけてくれた。俺もそのお返しをしたいんだ」
女店員「うん……」
男「えっ、お母さんが!?」
女店員「それで、手術が必要らしくて……その手術代が300万円かかるみたいで」
男(300万……!)
女店員「私、そんなお金ないし、どうしようかと思って……」
男「……」
男(俺の貯金をはたけばなんとか――)
男「俺、ちょうどそのぐらいの貯金あるし、それを使ってくれよ!」
女店員「だけど、大金よ? こんなことあなたに頼れないよ!」
男「いいって! お母さんの命にはかえられないもの!」
男「君が嫌だっていっても、300万受け取ってもらうからね!」
女店員「……!」
女店員「ありがとう……!」
女店員「時間はかかっても、必ず返すから……」
男「そんなこと気にしないでいいって」
男「お母さん、よくなるといいね」
女店員「うん……!」
男(あとは……手術が上手くいけばいいんだが……)
…………
男(あれから……彼女からすっかり音沙汰がなくなってしまった)
男(今まで遠慮してたけど、手術がどうなったか気になるし電話してみるか……)ピッ
『おかけになった電話番号は……』
男(繋がらない……!?)
男(いったいどうして……!)
店員「ああ、あの子? 辞めたよ」
男「えっ!?」
店員「あの子となにかあったの?」
男「お母さんが病気だっていうんで、治療費を渡したんですけど……」
店員「……プッ、マジで?」
男「はい、マジです」
店員「ハハハ……あんた、騙されてんだよ!」
店員「ようするに、金だけ取られて、逃げられたってこと!」
店員「だってあの子に病気の母親がいるなんて聞いたことねえもん!」
店員「今時バカがつくほどの正直者でお人よしだね、あんた」
店員「そんなんじゃ、今時やってけないでしょ。詐欺やわけ分からん健康食品なんかのいいカモだ」
男「そんなことない……彼女は俺を騙してなんかいない!」
店員「まあそう思いたけりゃ思うがいいさ。奇跡が起こるかもしれないしさ」
男「……」
同僚「おい、今夜飲みに行かねえか?」
男「あ、いや今お金なくって……」
同僚「なんで? なんかに使ったのか?」
男「知り合いの女性のために使っちゃって……」
同僚「おいおい、隅におけねえなぁ。いくらよ? 5万? 10万?」
男「300万」
同僚「……へ」
男(貯金なくなっちゃったから……しばらく節約しないと)
男「お、これ半額だ!」
男「冷凍庫に入れとけばだいぶ持つだろうし、買い溜めしとこう」ガサゴソ…
男「どうやりくりするか考えるのもなかなか楽しいな」
「……」コソッ
男「ん」
女店員「お久しぶりね」
男「あ……!」
女店員「私に……言いたいことあるでしょ?」
男「ああ、お母さんの手術はどうだった? 成功した?」
女店員「第一声がそれかよ……」
男「えっ」
女店員「だけど、あんたは300万持ち逃げされたことに対して不満をあらわにすることはなかった」
女店員「それどころか、のんきに節約生活始めてる始末」
女店員「母親が病気ィ? あんなもん嘘に決まってんでしょ、バカじゃないの!?」
男「え、嘘だったの!?」
女店員「そうよ、田舎でピンピンしてるわ。女手一つで私を育てたってのはホントだけどね」
男「そうか……。よかった……」
女店員「!?」
女店員「よくも騙したなっていいなさいよ! 300万返せっていいなさいよ!」
男「別に返さなくていいよ」
男「あれは君にあげたんだし、それにいつか本当に手術が必要になることもあるかもしれない」
男「もしそうなったら、お金はその時使ってくれればいい」
女店員「あんた、頭おかしいんじゃないの!? お人よしにも程があるわよ!」
男「君が勤めてたコンビニでも似たようなこといわれたよ」
男「そうかい」
女店員「なんでよ……なんで怒らないのよ!」
男「その買い物で君が満足して、そのおかげで君が健康になって、将来大病を患わずに済むかもしれない」
男「だとしたら、それでいいよ」
女店員「あんた、バカよ! 大バカよ!」
女店員「ホントは怒ってんでしょ? 罵りたいんでしょ? そろそろ本音をいってよ!」
男「分かった……俺の気持ちを正直に話そう」
女店員「……なんでよ」
男「だって……それくらい君が好きだから」
女店員「……!」
男「多分君に、イートインで食べることを申告したのを褒められたあの時から」
女店員「あんなもん、こっちはわざわざ申告するなんてバカだって思ってたわよ!」
男「それでも君が好きだ」
女店員「……!」
女店員(私はかつて騙されて大金を取られて……だから騙す側に回ろうと……なのにこの人は……)
女店員「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
ギュッ…
男「!」
男(急に抱きついてくるなんて……ビックリした)
女店員「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
男「なに、この封筒」
女店員「300万。一切手をつけてないわ」
男「いや、だからあげるって――」
女店員「ダメ! 受け取らない!」
女店員「私だって……好きな人からこんな大金貰えないって……」
男「……ッ!」
女店員「そうしよ!」
男「どこ行く? 今ここに300万あるけど……」
女店員「うーん、そうだなぁ。ここはやっぱり……」
二人「イートインへ!」
おわり
◆以下、おまけ(小ネタ)になります。
俺も毎回申告してる
8%のまま処理しちゃってレシートで気付いて
指摘したら店員が対応方法わからず本部?に
電話し始めて、後ろの客に喧嘩売られて
最終的にパトカー乗らされたわ
元スレ
男「イートインで食べるので消費税8%じゃなく10%でお願いします」女店員「あなたのような正直な方……好きですよ」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1579691222/
男「イートインで食べるので消費税8%じゃなく10%でお願いします」女店員「あなたのような正直な方……好きですよ」
http://hebi.5ch.net/test/read.cgi/news4vip/1579691222/
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コメント一覧 (1)
-
- 2020年01月22日 23:01
- 自分も申告しているよ……これが消費者の礼節
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