私がこれからお話することは、約十四年前の出来事です。

その頃の私は四十歳で、息子が十四歳でした。息子の祐次には、同級生の悪友が一人いました。その悪友の名前は鹿島というのですが、その子は祐次の小学生からの友達ではありましたが、大将と子分みたいな関係だったようです。

そんな関係も中学生になる頃には、鹿島君が私立の中学に入り、祐次が県立の中学で剣道部に入ると同時に疎遠になっていっていたようです。

でも一年くらいして、その鹿島君は私立で問題を起こしたらしく、県立の中学に転校してきました。それから、また二人は以前のような友人関係になりました。



 そして、ある日、遊びにきた鹿島君に祐次が勉強を理由に断ったことから歯車が狂い始めました。



何度となく断っても、しつこく誘ってくる鹿島君にごうを煮やした私が出て行き、強い調子で鹿島君に注意しました。



すると、鹿島君は「おぼえてろよ、祐次もおばさんも酷い目に合わせてやる」と言いました。

 私は子供の虚勢だと思って、その言葉を聞き流していました。



でも、それは大きな間違いでした。その三日後あたりに、その鹿島君がまたやってきました。



学校の帰りだったのか、学校の制服のままでした。この時は、息子は部活で留守にしていたので、私はそのことを鹿島君に伝えました。



「今日は祐次に会いに来たわけじゃないんだ。おばさんと少しお話がしたくて。・・・」

「お話?・・・」



「そう。祐次についてのことなんだけど。ちょっと長くなりそうだから、玄関に入っていい?」



「ええ、いいわよ」



 この時に玄関内に入れなければ、もう少し違った対処ができたかもしれません。バタンとドアが閉まり、外には中の様子は見えません。でも、私は気にしませんでした。だってまだ○学二年生だったんです。



「お話ってなに?」



「あのさ、俺が私立で上手くいかなくて、県立の中学に入ったこと、おばさん知っているよね?」



「ええ、知っているわ」



「俺さ、まだ新しい中学に転校したばかりで、親しい奴すくないんだ。だから、祐次の所に遊びに行くんだ。でも、この前、遊びたかったのに、遊んでくれなかったじゃない?」

「だって、それは祐次が勉強をしていたんですもの。しょうがないじゃない。勉強の後にすればいいんじゃないの?」



「勉強なんて後でも出来るじゃない。俺、祐次に断られてスゲー、ショックでさ。・・・ちょっと部活を初めたからって生意気になったよなアイツ。だからさ、俺、祐次をイジメることにしたから」



「ちょっと待って。なんでそうなるのか、おばさん全然わからないんだけど。・・・」



「そんなことを言っても無駄だよ。すんげー虐めまくって、学校に行かれないようにしてやるんだ」



 私は背筋が冷たくなる思いでした。前々からちょっと悪友として近所で有名だったし、鹿島君は私立に行くくらいに頭がいい。祐次を虐めたりしたことも過去に何回かあるようでした。本気になれば出来なくもないのです。


オススメサイトの更新情報

ひじきそくほうのその他の記事

ひじきそくほうに関連するツイート


コメントとツイートが多い記事