【アイマス ×鬼滅】千早「プロデューサーは笑わない」
【アイマス ×鬼滅】しのぶ「多分よくある血鬼術」
目の前で私のプロデューサー…冨岡義勇さんが頭を下げている。
「本ッ当に、申し訳ありません…私からも謝ります」
隣でプロデューサーの頭を抑えながら、自分も頭を下げているのは亜美と真美のプロデューサー、名前はたしか胡蝶しのぶさん。
「ちょっ…!?」
「は?」
思わず声が出てしまった。嘘でしょう、この人。何かわからないまま謝りに来たの?
「バカなんですか?」
私よりも先に胡蝶さんが声に出してくれた。説明なんて…したくない。
「…さっき自分で原因を言っていたじゃないですか?」
「?」
あぁ、絶望的に噛み合っていない。胡蝶さんはこの人とここに来る前からの知り合いと言うけれど、こんな風にずっと苦労してきたんでしょうか…いえ、私も他人のことは言えないけれど…。
胡蝶さんが言い淀む。こんな話したくないだろう。私だってそうだ。絶対自分からは言いたくない。
「んんっ!」
それをこの人はズケズケと…。デリカシーという言葉を知らないんでしょうか?
「冨岡さん?デリカシーってご存知ですか?」
「俺のデリカシーに何か問題が?」
「良かったです。言葉だけは知ってたんですね」
全然良くないでしょう。知ってた上でこれなんですから。コミュニケーション能力が致命的です…いえ、本当に私が言えたことではないんですけれど。
「…勝手に納得しないでくれますか?」
久しぶりに口を開くと『ではなぜだ?』というような顔をする。いえ、合ってますよ!合ってますけど…。
「…合ってますよ…」
胡蝶さんが見ていられないとばかりに口を挟む。
「もう、ちょっと黙っていてくれますか?」
笑顔のままなのに怖い…。この辺り本気で怒った律子に似てるわね…。
「如月さん、本当にごめんなさい。冨岡さんは見ての通り残念な人なんです」
『だから友達も少ないですし』と続ける胡蝶さんにプロデューサーが『俺には胡蝶と竈門がいる』と頓珍漢な返事をする。
本当になんでこの人が一番喋っているのだろう。一番関係の無い、何なら巻き込まれただけなのに、私たちのために…こんなところまで、律子にそっくりね…そういえば、彼女の胸も…くっ…。
「如月、胡蝶の胸元ばかり見てどうしたんだ?」
「は?」
「え?」
「ちょっと冨岡さん!黙ってろって言いましたよね!?」
「し、しかし…」
「もういいです」
腹が立つのは事実を言われたからだ。真剣に私たちの仲裁をしてくれていた胡蝶さんに申し訳ない。自分でも性格の面倒臭さを自覚している私だけれど、大人になることも覚えなければ…。いつまでもフォローしてもらうばかりではいけない。
「いや…俺はまだ…」
「いいじゃないですか。人には相性がありますから。お仕事ですし、仲良しこよしじゃなくてもいいじゃありませんか」
そう、人には合う合わないがある。決して悪い人じゃないのだろう。私じゃなくて春香や我那覇さん(私にとって前向きでコミュニケーション能力が高い二人)の担当だったのならば上手くいったのかもしれない。こればっかりは組み合わせを考えた社長の責任ね。一体何を考えていたのかしら…。
ビジネスライクにいこう。仕事については、真面目な人なんですから。
渋々といった顔でプロデューサーは駐車場に向かった。
「あの…如月さん」
「はい、なんでしょうか」
胡蝶さんに呼び止められる。
「いえ、何も胡蝶さんがそこまで謝らなくても…」
どうしてこの人はプロデューサーの世話をやくのだろうか。プロデューサーと胡蝶さんはプライベートでも仲が良いのだと亜美真美に教えてもらったことがある。見た目はもちろん、声も可愛らしい。私よりもアイドルに向いているのではないかと思うそんな人が、どうしてあの人と好き好んで一緒にいるのだろうか。
にっこり微笑んでそういう胡蝶さんの笑顔は、普段の笑顔の何倍も綺麗だった。思わず息をすることを忘れるほどに。こういう表情を、私はどこかで見たことがある…どこだったかは思い出せないけれど…。
「あぁ…」
急に深刻な顔に戻った胡蝶さん。気持ちはわからないでもない。
「それに…本当は優しい人なんです。ただ成人男性としては失格というだけで…」
「それは…」
優しいと言うのだろうか?聞きかけた言葉を慌てて飲み込む。流石に失礼だ。それくらいの分別はつく。
「…それは流石に無理が」
四歳も歳上の相手を五歳児に見立てるなんて至難の技ね…高槻さんならできるのかしら?
「…失礼します」
そう言う胡蝶さんは、またあの表情になっていた。何なんだろう。つい最近までどこかで見ていた気がする。あんな綺麗な表情をするのは誰だったのか…。思い出せないまま、私はレコーディングに向かった。
レコーディングを始めて五分後の発言だった。
「は?」
思わず語気も荒くなる。私は歌に全てをかけている。そりゃあ昔のように命を削るような歌い方はもうしていないけれど、それでもプロとしてのプライドはある。それくらいには歌に全てをかけてきた。それを…
「は、はい…」
怒らないように、ようやく絞り出した声でスタジオのスタッフさんに続きの音を流すように促す。
「どうしてですか!?」
意味がわからない。だんだんと我慢も効かなくなってくる。そもそも私だって人付き合いは得意な方ではないのだ。
「如月の歌が下手くそだからだ」
「なっ!?」
一度ならず二度までも、そんな言葉を実際に使う日が来るなんて思わなかったけれど、まさにそんな気分だった。スタッフの人もざわついている。私の歌は海外でだって聴かれているし、アイドルであの『オールド・ホイッスル』に出たのだって私だけだ。自惚れにならない程度には歌に対しての自信はある。
最早私は怒鳴っていた。けれどそんなことはどうでもいい。私が全てをかけてきた…特に765プロのみんなに支えられながら積み上げてきた今の私の歌を否定されるのが我慢できなかった。
「…っ…もういいです!帰ります!」
気付くと私はスタジオを飛び出していた。こんな仕事の放り出し方、以前の私でもしたことはない。けれど、他に方法が思いつかなかった。
走って走って走って、走り続けた。息があがる。ここまでくればプロデューサーも…
「待て!如月!」
「嘘!?」
速い!プロデューサーは真後ろにいた。これでも鍛えている方なのに…。というか、この距離でそんな大声出しますか、普通。
「如月!?」
視界が歪む。身体がゆっくりと倒れていく。転んだのだと気付いたのはしばらくしてからだ。おかしい…何もないところで転ぶなんて、春香じゃないんだから…。
プロデューサーの声がうるさい。聞こえていますよと言おうとして、声が出ないことに気付く。どうしたんだろう。視界が…ボヤけて…いく…。
目を覚ましたのは事務所の医務室だった。
「千早ちゃん!」
「は…るか…?」
「良かった!目が覚めたんだね!」
「まこ…と?」
春香に真、萩原さんもいる。我那覇さんは何故か涙目だった。
「え!?」
音無さんに教えてもらった。私があの後倒れたこと、プロデューサーが連れて帰ってきてくれたこと、そして、お医者さんがくるまで必死で看病してくれていたこと。
「風邪…?」
確かに調子はよくなかった。けれどそれはイライラしているからだと思っていた。思い込んでいた。
「千早はすぐに無理するからね…」
「っつ…」
「大方歌に集中しすぎて気付かなかったんでしょ?」
言われて初めて喉の痛みに気付く。確かに水瀬さんの言う通り、あの時は気付かなかった。歌に集中しすぎていたから…それじゃあまさか、あの人は…。
「それじゃあ律子が帰れないじゃない…そこまで迷惑は…」
「こんな時までそんなこと気にしなくていいの」
「子供じゃないんだから、大丈夫よ…」
「子供でも風邪にくらい気付くのよ」
「くっ…」
何も言い返せずに事務所に泊まることが決定してしまった。迷惑をかけてばかりで申し訳ない。
「おやすみ、千早ちゃん」
「おやすみなさい」
律子と音無さんに挨拶をする。そこからは熱が出ていたこともあってとろとろと眠りに落ちていった。
「んっ…」
「…すまない、起こしたか?」
「ひっ!?」
プロデューサーだった。いえ、額の冷やしタオルを変えてくれていたのだけれど…私だって女性です。寝ている部屋に男の人がいたら驚くのは当たり前でしょう。
「俺もそう思ったが、胡蝶が帰ってしまった」
「はい?」
胡蝶さんが帰ってしまったことと、今のこの状況、何の関係があるんでしょうか。
「はぁ…」
胡蝶さんの方が歳下でしたよね?どういう流れでそんなことを歳下の女性に教わるんですか?
『え?知りませんよ、私は今から亜美ちゃんと真美ちゃんと一緒に遊ぶんです』
「…と言われてしまった。先約があるなら邪魔はできない」
「それは…」
揶揄われてますよ、とは言えなかった。あまりにも大真面目に言っているから。
おそらく律子や音無さんのことでしょう。765プロで働き出してしばらくたつのに名前を覚えていないところがこの人らしい。
「…」
正直ツッコミどころはたくさんあった。けれど、こうして事情を聞けばあまり強くは言えない。私だって似たようなものだから。
「如月が倒れた時だ」
「え?じゃあレコーディングの時は…」
「気づいていなかった。だが、『いつもの如月と比べて』下手くそだった、『だから何か不調があると思ったから』帰るように提案した」
「は?」
わかりにくすぎる。どれだけの言葉を省略していたのだろう。
「…ふふ…言ってませんよ」
『本当は優しい人なんですよ』
あまりの不器用さに笑ってしまう。胡蝶さんの言った言葉の意味が本当の意味で理解できた気がする。
「ありがとうござ…ってこれ、カラカラです
…」
「何!?」
力加減を間違えた…というが、そういう問題なのだろうか。いくら力を込めてもカラカラにはならないと思うけれど…こう見えて意外と握力が強いのかしら。
「…えぇ、ちょうどいいです」
本当はびちゃびちゃだったけれど、多分これ以上は不器用な彼には不可能だろう。ここは嘘をつくことにした。
「帰っちゃうんですか?」
「あぁ、女性の部屋にいるのはよくない」
変なところで真面目なんですね。いえ、本人からすればずっと大真面目なのでしょう。
「…だから隣の部屋にいる。何かあれば呼んでくれ」
「…はい、ありがとうございます」
大真面目な彼が出した答えにしては真っ当な判断だった。
「あ、弟みたいにって…そういうこと…?」
胡蝶さんのアドバイスが的確だったことに驚きながら、その日は目を閉じた。
あれから数日が経ち、私の風邪もすっかりよくなった。プロデューサーは同じプロデューサーの不死川さんに怒られている。
「落ち着け、不死川、とらやのおはぎをやろう」
「舐めてんのかァ!?」
また火に油を注ぐようなことをしている。
「今になっても治らないことが問題だろォがァ!」
「俺はドジっ子ではない」
もう無茶苦茶だ。しょうがない、助け船を出しましょう。
「あぁん!?これ以上ねェくらい聞いてるだろうがァ!」
「不死川は気が長いんだな…」
「あぁん!?」
「もう!義勇さんは黙っていてください!」
なんだか、更にややこしくなっている気がするけども…少しだけ、プロデューサーのことが理解できた気がします。
「ん?どったの真美?」
「千早お姉ちゃん、ぎゆぎゆのこと『義勇さん』って呼んでるね」
「ね、気づいてんのかな?」
「気づいてないんじゃない?」
「うん…」
「『義勇さん』って呼んでる千早お姉ちゃんを…しのしのがすっごい目で見てるね…」
「うん…まん丸だね…」
「気づいてんのかな?」
「気づいてないんじゃない?」
「ミキミキが兄ちゃん見る時と同じ顔してるYO!」
「けど、わかんないか…」
「そーだね、千早お姉ちゃんだもんね」
「そーだね、ぎゆぎゆだしね」
「すぐに一人で抱え込んじゃうし…」
「真面目がすぎて変なことやっちゃうし…」
「「似た者同士だもんね」」
終わり
前作こちらです
【アイマス ×鬼滅】しのぶ「多分よくある血鬼術」
これがないと意味不明ですね…
まとめ依頼出してきます
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コメント一覧 (2)
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- 2020年03月11日 06:06
- 続編やんけ!
-
- 2020年03月11日 19:44
- 面白い (小並感)
風柱や蛇柱は誰担当か気になるわ
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