Lisovskaya/iStock
プラスチック汚染は現代社会を象徴するかのような問題で、それゆえに今すぐに解決されることはないように思える。
しかし、ほとんどの人はあまり好きではないだろう生き物が、我々人類の救世主になってくれるかもしれない。その生き物とは、プラスチックをガツガツとむさぼるワーム(幼虫)のことだ。
ハチノスツヅリガの幼虫、ワックスワームは、レジ袋などのプラスチックの一種であるポリエチレンをムシャムシャと食べてくれるのだという。
スポンサードリンク
プラスチックを食べる生物
じつはここ数年、プラスチックを食べて生きられる生物がいくつも発見されている。
たとえば、ペットボトルのリサイクル工場で発見されたPETを分解できるバクテリアや、人工的に酵素を改変して発泡スチロールを消化できるようになったミールワームなどだ。
今回のワックスワームもまたそうした例の1つ。ワックスワームはハチノスツヅリガの幼虫で、ミツバチの巣に寄生して被害を与えることから、養蜂家や蜂からは特に嫌われている。
だがこの虫はプラスチックが大好きで、ムシャムシャとかじり付いては、「エチレン・グリコール」というアルコールに分解してしまうことから、世界のプラスチック汚染問題の解決に利用できるのでは? と期待されている存在でもある。
Brandon University
プラスチック分解能力の秘密は腸内細菌
カナダ、ブランドン大学の研究グループが今回突き止めたのは、この驚異的な能力の秘密はワックスワームの体の中に潜む腸内細菌にあったということだ。
ワックスワームから取り出されたその腸内細菌は、ポリエチレン(PE)だけで繁殖し、1年以上生きていられることが確認されたのである。
もちろん、その宿主であるワックスワームもまたポリエチレンだけを食べてきちんと生きられる。
ポリエチレンは、容器、買い物袋、包装用フィルムなど、さまざまなものに使われているプラスチックの一種だ。ワックスワームはこれに対して旺盛な食欲を示し、60匹で1週間もしないうちに30cm2以上のビニール袋を食い尽くしたという。
また、プラスチックだけを与えられたワックスワームでは、普通のエサを食べていた個体に比べて、腸内細菌が増えることまで判明した。
RitaE from Pixabay
ワックスワームと腸内細菌の協力体制が重要
面白いことに、腸内細菌を体内から取り出してしまうと、プラスチックの分解速度が大幅に低下するのだという。
同様に、抗生物質で腸内細菌を殺してしまうと、ワックスワームはそれまでのようにプラスチックを食べられなくなる。
つまり、その分解能力は両者が協力したときに最大に発揮されるようなのだ。腸内細菌とワックスワームとの間に何らかのシナジー効果があり、プラスチックの分解能力が強化されているということだ。
Brandon University
プラスチック汚染問題の解決策としての応用に期待
研究グループの1人によると、プラスチック汚染は規模が大きすぎて、単純にワックスワームだけを投入して解決することは難しいという。
しかし、その体内でプラスチックがアルコールに分解されるメカニズムや、腸内細菌が繁殖しやすい条件を理解すれば、それらを応用して、より良い解決策を考案できるかもしれないとのことだ。
この研究は『Proceedings of the Royal Society B』(3月4日付)に掲載された。
References:brandonu/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
有毒性の発泡スチロールを食べて消化してくれるミールワームがゴミ問題の救世主になる可能性(米研究)
海洋汚染の元凶であるマイクロプラスチック。淡水に流れ出る6割が洗濯による糸くずであることが判明(米研究)
プラスチックを食べるキノコが世界的なゴミ問題の救世主となるかもしれない(英研究)
使用済みのコンタクトレンズが環境問題を引き起こす。河川に大量のコンタクトレンズが蓄積(アメリカ)
カナダ政府、2021年までに使い捨てプラスチックの使用をほぼ全面禁止にする方針を発表
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「サイエンス&テクノロジー」カテゴリの最新記事
「昆虫・爬虫類・寄生虫」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 4004 points | 動物保護施設が寄付者にペットの似顔絵を提供。その似顔絵がいい味ですぎて希望者殺到(アメリカ) | |
2位 3395 points | 紫外線の熱で感染を防ぐ。新型コロナウイルスを撃退するボディシールドが設計される(中国) | |
3位 3286 points | 猫の国トルコだもの。オーケストラのステージに迷い込んだ野良猫、演奏中もステージ中央に鎮座 | |
4位 2645 points | 江戸時代の日本の消防士「火消し」の衣装が粋でいなせでカッコいい! | |
5位 2401 points | 中世のペスト専門医師が着用していたマスク(ドイツ医学史博物館) |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
ごめん^^;
2. 匿名処理班
石油製品なら、なんでも消化できるようなって、死骸は再利用不可になる。
そんな、異常性を獲得しそう。
3. 匿名処理班
海洋のプラスチックに関してはどうするんだろう
4. 匿名処理班
週別の人気記事ランキングが
1位 ペットの似顔絵(画伯もいらっしゃる)
2位 コロナ関連(今話題だし)
3位 オーケストラに猫が迷い込む(可愛いし)
4位 江戸時代の消防士の衣装が粋(確かに見る価値あり)
などなど印象的でカラパイアらしい記事が続く納得のラインナップだったんだけど
8位のバナナ型消臭グッズで笑った
これもランクインしてたのかw
5. 匿名処理班
これアレだ
普段使うプラスチックも食われちゃうSCP的なやつだ
6.
7. 匿名処理班
その細菌を人間の腸で増やしてやればなんでも食べられるようになるかな
「グラトニー」と命名しよう
8. 匿名処理班
「まずそもそもポイ捨てするんじゃねーよ」
という
9. 匿名処理班
ツイッターでマイクロプラスチック問題を「地球の歴史の長さから見れば一瞬」とほざいてたのがいたなぁ。
人を馬鹿にして悦に入るタイプの奴だったので、
奴自身でなく、罪はなくても奴の最愛の人間が苦しむだけの病気になったとして、
俺が治療法を知る唯一の人間だったとしても、
「病苦が一生続いても、地球の歴史から見れば一瞬だから」と、ブーメランをぶち込んでやりたくなるツイートの奴だった。
10. 匿名処理班
未来の諺「プラ食う虫も好き好き」
11. 匿名処理班
石油喰らいかな?
12. 匿名処理班
自然界で大発生したら人間の文明が崩壊しそう、プラモデルも無残な姿に。
13. 匿名処理班
こいつらが21世紀の人類の痕跡を地球から抹消するんですよ(SF脳)
14. 匿名処理班
自然って凄いなぁ
15. 匿名処理班
アラレちゃんのガッちゃんは
絵空事じゃなかったんだな。
16. 匿名処理班
こういうのが食う速度と処理が必要なゴミの量のつり合いが取れるかというと厳しそうだしなぁ
17. 匿名処理班
10年以上前、土壌のバクテリアからプラスチックを食べて無害にする発見した日本人はどうなった、日本政府が援助して開発する話
18. 匿名処理班
人工物だって、地球が生産してきた物資から作られているんだから、それを分解可能な生物が存在したっていい。
マイクロプラスチックを分解可能なバクテリアとかが出来たら、下水処理場とか浄水場で処理できるようになりそうだし、研究頑張って欲しい。
19. 匿名処理班
この類の微生物は日本でもう10年以上前に見つけてたと思うが
20. 匿名処理班
政令されるまで燃やしてて今まで害なかったのにな
プラは燃やしたらいいわ
21. 匿名処理班
BMネクタール思い出すな
22. 匿名処理班
※1
はい収容
23.
24. 匿名処理班
>>2
SCPにそんな奴居なかった?
25. 匿名処理班
その腸内細菌を人間の体内に定着させれば、食糧危機も解決するし一石二鳥だ。
自分たちで蒔いた種は、自分たちで刈り取らなくちゃね。
26. 匿名処理班
外国からケチつけられるけど
リサイクルしにくいヤツは燃やした方がマシだと思うけどな
その間に分解性のあるに変えていけばいいのに
27. 匿名処理班
絶対に逃すな!
28. 匿名処理班
逆に考えるとミツバチは天然プラスチックを作るということか