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交通事故で両手を失ってしまったインドの女性が、両手移植手術を受けたのは今から3年前のこと。男性から女性への手の移植としては、世界で初のケースだと言われている。
その後、リハビリを経て徐々に回復した女性に、顕著な変化が現れた。移植した両手の色は暗い肌のトーンでがっしりとしていたが、日を追うごとに女性の肌の色にだんだん近づき、指がしなやかになり、ほっそりした手になってきたのだ。
最近、この希少なケースを報告した専門医は、「原因についてははっきりとしたことは不明だが、おそらく女性ホルモンが変化に繋がったのでは」と述べている。
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Asia's first upper arm double hand transplant performed at Kochi hospital
2016年の交通事故で両手を失った女性
シュリヤ・シッダナゴウダーさん(21歳)は、2016年にプネーからカルナータカ州にあるマ二パル工科大学に行く途中で交通事故に遭い、両手を失った。
激しい損傷だったことから、医師はシュリヤさんの手と前腕両方を切断する以外に選択肢がなかったという。
怪我からの回復に1年ほどかかったシュリヤさんは、その後アムリタ研究所を訪れ、両手移植に登録した。
同研究所の待機リストには、アフガニスタンやバングラデシュなど他国の患者を含め、約200人が登録していたが、奇跡的にもシュリヤさんが登録した同日である2017年8月19日に、ドナーが見つかったと医師から連絡を受けた。
事故で他界した男子学生の両腕を移植
インドでは多くの人が義肢をつけているが、多くの家族が愛する身内の外観を損なうことに恐れを抱いており、移植のために四肢を病院で提供する人はほとんどいないそうだ。
しかし、あるカレッジに通っていた当時20歳の男子学生の両親は、オートバイ事故で息子が脳死と宣告された時に、「臓器を提供することで他の人達により良い、幸せな生活を送ってほしい」と望み、臓器提供に同意。
その男子学生の両手との適合性が完全にマッチしたシュリヤさんに、医師はすぐ移植手術を行った。
患者が若いということと、男性から女性への手の移植は前例がなかったことから、医師らには多少の躊躇があったものの、若いシュリヤさんが新たな両手を得て、元通りの人生を歩めるようになることが何より重要だと思ったようだ。
13時間に及んだ手術では、20人の外科医と16人の麻酔チームが参加。最初に、シュリヤさんとドナーの手の骨、次に動脈、静脈、筋肉の腱を結び、最後にドナーの手の皮膚をシュリヤさんの腕の皮膚に縫い付けた。
手術後は、ケララ州コチにて半年間、集中的に理学療法を受け、体を新しい手に慣れさせた。
末梢神経の発達には時間がかかり、手の感覚は毎日少しずつしか改善せず、移植直後はかなり重いと感じながらも懸命にリハビリをこなしながら、新しい両手に徐々に慣れていったシュリヤさん。
そんな中、本人や家族がある変化に気付いた。
移植した手の色や指の形、長さが変化
毎日、娘のリハビリをサポートし、新しい手を見続けて来たシュリヤさんの母は、過去4か月間で、移植された両手が娘の細い腕に合わせるかのように、脂肪がゆっくりと溶け、重みが失われていること、指が女性のそれのようにしなやかになり、手首もずいぶん細くなっていることに気付いた。
更に、最も顕著な変化はその色だった。移植直後の手はシュリヤさんの肌の色よりも暗いトーンだったが、日を追うごとにシュリヤさん自身の肌の色のように明るくなってきたのだ。
その原因については、手術を行ったアムリタ研究所の医師は次のように述べている。
インドでは手の移植自体が非常に稀であり、特にこのケースはインドで男性から女性への手の移植手術に成功した初の症例とされています。
今の段階では、正確な調査をしていないのではっきりとした理由はわかりません。おそらく、女性ホルモンが変化に繋がったのではという推測のみです。
新しい手で再び社会性を取り戻したシュリヤさん
最も大切なのは、シュリヤさんが移植された手によって、事故前のような普通の生活を再び取り戻せることだ。
事実、現在プネーのファーガソン大学に通っているシュリヤさんは、前学期には新しい手を使って試験用紙に文字を書くことができたそうだ。
事故直後は、心身ともに激しく落ち込んだというシュリヤさんだが、今は新しい手と社会性と笑顔を取り戻している。
3つの神経のうちの1つと指の筋肉は、まだ完全には機能していないが、これまでの回復が劇的な進歩を遂げているように、今後もリハビリを続けていくことで、自分の手としてより一層しっくりと快適に感じる日が来ることをシュリヤさんは願っている。
References:The Indian Expressなど / written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
完全に適合したからこそ彼女に合わせた色や姿になってたんだろうなあ
人体と命の神秘ってすごい
2. 匿名処理班
つまりヒュームの腕を貰ったリンダもあのまま何年かすればリンダの手のサイズと色になったのか
3. 匿名処理班
ブラックジャックの寿司職人の話みたい。
4. 匿名処理班
「アムリタ研究所」のSFファンタジー感