粘菌。このアメーバ様単細胞生物が、宇宙最大の謎の1つの解明を手助けしてくれるのだそうだ。
宇宙では、ダークマターとガスのフィラメント(細かい糸状の構造)が網の目のようなネットワークを形成している。フィラメントは数百万、数億光年と広がり、銀河や銀河団、さらには超銀河団までをも結びつけている。
このネットワークを「コズミック・ウェブ」という。
その壮大さに反して、コズミック・ウェブは嫌になるほど薄暗い。これを構成するとされるダークマターは、そもそも光と相互作用しないと考えられているのだから当然だ。もちろん、その分布をマッピングするのは至難の業だ。
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粘菌の行動をヒントに作られた3Dマップ
そこでカリフォルニア大学サンタクルーズ校(アメリカ)の研究グループは、3万7000以上の銀河のアーカイブデータを選別し、高度なアルゴリズムで目に見えないフィラメントをマップ化することにした。
このアルゴリズムはそんじょそこらのアルゴリズムではない。開発のヒントになったのは、なんと「モジホコリ」という粘菌の仲間だ。
モジホコリは体をネットワークのように広げ、胞子や細菌などを捕食する奇妙な原生生物だ。獲物を探すために伸ばされる偵察用の”ひげ”は、エサを見つけた場所で育ち、残りのコロニーとに強力なつながりを作る。
アルゴリズムはこうした捕食行動を真似したものだ。つまり研究グループは、個々の銀河をモジホコリにとってのエサに見立て、コズミック・ウェブのつながりを示す3Dマップを作り上げたのである。
粘菌の行動をヒントにして作られたコズミック・ウェブの3Dマップ。アルゴリズムでは、銀河を粘菌にとってのエサに見立てている。黄色で示されているのが銀河、紫で示されているのがコズミック・ウェブ
宇宙のエサを燃料に誕生する星々
偶然にも、銀河の間に漂うガスは「宇宙のエサ」のようなもので、これが星の形成の燃料となる。
そのため、コズミック・ウェブのフィラメントが銀河を結ぶ様子が分かってしまえば、ある銀河で星が誕生するペースを予測できるようになる。
こうした予測は、銀河のコズミック・ウェブとの結びつきの有無や、他の銀河に結合している程度に基づくものだ。
仮にあまりにも強く結びついていると、星が形成されるチャンスは失われてしまうかもしれない。だが、結びつきが弱すぎれば、星を誕生させる燃料が足りなくなる。
知能があるかのような不思議な粘菌
ちなみに、粘菌を使ってさまざまな構造をマップ化しようという試みはこれが初めてではない。
粘菌は、エサや資源を求めて地下に複雑なネットワークを形成することができる。そして、こうした構造は、ある問題を解決する傾向を持っているのだ。
その問題には、たとえば従来のコンピュータではなかなか解くのが難しい最短経路問題が挙げられる。粘菌は、迷路の中に置かれたエサまでの最短経路を発見するのが得意で、こうした習性を利用した計算は「粘菌コンピューティング」と呼ばれている。
コズミック・ウェブの発見につながるか?
なお、粘菌アルゴリズムが指し示すフィラメントの位置は、ハッブル宇宙望遠鏡からガスのサインが検出されている場所であるという。
フィラメントの内側はガスが濃くなると考えられるが、実際にガスのサインはフィラメントの内側へ向かうほど強くなっているそうだ。
粘菌アルゴリズムを使えば、コズミック・ウェブの位置をピンポイントで特定できるだけなく、実際に発見できるかもしれない。
この研究は『The Astrophysical Journal Letters』(3月10日付)に掲載された。
Dark threads of the cosmic web revealed
References:Astronomers use slime mold model to reveal dark threads of the cosmic web/ written by hiroching / edited by parumo
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