先日、カラパイアでも「ベネチアの運河にイルカや白鳥が戻って来た」というニュースをお伝えした。これはツイッターで拡散され話題となっていたものだが、実はこれがフェイクだったことが明かされた。
専門家によると、世界がパンデミックという危機的状況にあるからこそ、こうした“幸せな”フェイク情報が容易に多くの人々を信じさせたと説いている。
スポンサードリンク
ベネチアの運河にイルカや白鳥はいない
世界的に新型コロナウイルス感染の危機が伝えられる中、SNSではいくつかの明るいニュースが拡散した。
人気の観光地だったイタリアは今や閑散としているが、中国と共に汚染レベルが改善されたという朗報が伝えられた。ここまでは事実だ。
だが、このニュースに相まってベネチアの運河でイルカや白鳥が泳いでいるというツイートが投稿されたが、その映像や画像はベネチアのものではないという。
Venice hasn't seen clear canal water in a very long time. Dolphins showing up too. Nature just hit the reset button on us pic.twitter.com/RzqOq8ftCj
— Gianluca De Santis (@b8taFPS) March 17, 2020
『National Geographic』などが伝えるところによると、これらの画像や動画を検証した専門家らは、イルカはベネチアから500マイル(約800km)も離れた地中海に浮かぶサルデーニャ島で撮影されたものであることを明かしたという。
サルデーニャ島ではイルカをテーマにしたボートツアーを観光客に提供していることから、イルカがサルデーニャ島にいることは間違いないが、ベネチアの運河に現れたわけではないのだそうだ。
ベネチアの水がクリアになったことをTwitterでシェアした人物は、「イルカが(ベネチアに)姿を現した」とツイートしており、メディアをはじめ多くのユーザーが「ベネチアの運河にイルカが出現」と信じてしまった。
また、白鳥の写真をTwitterでシェアしたインドのニューデリー在住のアフジャさんは、新型コロナウイルスがイタリアに蔓延する前に白鳥が既にブラーノ島でのみ常連だったことを知らず、SNSでいくつかの写真を見てそれらをツイートしたと話している。
Here's an unexpected side effect of the pandemic - the water's flowing through the canals of Venice is clear for the first time in forever. The fish are visible, the swans returned. pic.twitter.com/2egMGhJs7f
— Kaveri 🇮🇳 (@ikaveri) March 16, 2020
こんな時期だからこそ、喜びをもたらす何かを共有したくてツイートしました。自分の投稿がこれほど拡散するとは思っていなかったし、誰を傷つけるつもりも問題を引き起こすつもりもありませんでした。
Twitterに編集オプションがあればよかったのにと今回ほど思ったことはありません。
ただ、ベネチアの運河の水の透明度が増したのは、ボートの運航が減少したからであって、イタリアの汚染が改善されたということが要は一番重要なことなんだと言いたかったのです。
このツイートには前例のない「いいね」やリツイートを受け取りました。あくまでも個人的記録なので削除もしたくないし、その予定もありません。
運河の水が透明度を増したのは事実
ベネチアの運河は、ボートの運航が減少したために水の透明度が増したのは事実だ。しかし、イルカや白鳥は真実ではない情報である。
今回のような偽情報が拡散される理由について、専門家らはこのように述べている。
フェイク投稿をする人は、いいねやリツイート数が数千人に達するのを見る幸福感の過剰摂取を欲しています。ユーザーらを良い気分にさせ、投稿主の自尊心を一時的に高めているのです。
現在、新型コロナウイルスによるパンデミックや経済の崩壊、突然の孤立に陥っているため、気分が良くなるものが求められています。
1人1人が孤独に陥っていると、特に多くの希望を与える投稿は、より一層魅力的に感じてしまいます。
この危機の状況で、動物や自然が繁栄する可能性があるという考えは、私たち人間に意味と目的を与える手助けとなります。つまり、人間がどういう状況になろうとも、自然はそれに屈しないほど強力であるということを私たちはどこかで願っているからなのです。
前向きな情報の投稿は必要。だが正しい情報を心掛けよう
Pew Research Centerの調査によると、アメリカ人の約半数は新型コロナウイルス関連の偽情報やフェイクニュースに騙されたと答えているという。
ベネチアの運河のイルカや白鳥に関する“幸せな”フェイクニュースは、健康関連のフェイクニュースと比較するとそれほど問題ではないかもしれないが、世界中が危機的状況に瀕している時に、このような誤った形で希望を広めることは、やはり正しいとは言えないようだ。
心理学の専門家らは、このように説いている。
このような幸せなニュースが結局フェイクだったと知ることで、人々は「やはり現実には良いニュースなどないのだ」と思い、不安や不信感を更に募らせることになります。
SNSの希望的な投稿は、自宅で過ごすのを余儀なくされている人々がスクリーンを介して相互に接続するため、今後数週間から数か月の間は精神を維持する上で重要な役割を果たす可能性があります。
人々に前向きなものを共有するようにしてください。でもそれは、劇的である必要はありません。真実であることが何より重要です。
KristopherK/pixabay
ベネチアの次は中国でのフェイク投稿が拡散
心理学専門家によると、注目を浴びたい人は危機的状況であっても嘘をつくという。結果、Twitterなどで複数の写真を埋め込み、起こっていないことを主張し、何万人もの人を騙してしまうのだ。
ベネチアのイルカに次いで、Twitterでは中国雲南省の農村で民家の醸造酒を飲んで泥酔した複数の象が、茶畑で爆睡するというツイートが画像とともにシェアされ、拡散した。
While humans carry out social distancing, a group of 14 elephants broke into a village in Yunan province, looking for corn and other food. They ended up drinking 30kg of corn wine and got so drunk that they fell asleep in a nearby tea garden. 😂 pic.twitter.com/ykTCCLLCJu
— Corono she better don’t (@Spilling_The_T) March 18, 2020
中国とイタリアは、新型コロナウイルスによる大きな被害を受けた国だけあって、野生生物の勝利宣言のような投稿は多くのユーザーらの注目を浴びたが、結局これもフェイクだった。
この中国の象のツイートについては、画像がどこから来たものなのかは定かではないという。しかし、中国のニュースメディアはこのツイートをフェイクと報じている。
人がストレスを感じている時、動物のポジティブな映像がいかに魅力的であり安らぎを求める場所になるかということは、これらのツイートの拡散から見ても明らかだ。
だが、専門家の言うように、今この時期だからこそSNS情報には更なる警戒が必要と言えるだろう。
References:mashableなど / written by Scarlet / edited by parumo
あわせて読みたい
新型コロナウイルスで活動が制限されたイタリア、ベネチア運河でイルカの姿が発見される
新型コロナウイルスの影響で休館となった水族館で、ペンギンがお客さんに。悠々と魚の水槽を見学中(アメリカ)
恐怖心の感染力は新型コロナウイルスよりも強力。不安が人から人へと急速に広がる理由
コロナ疲れしている人の為の、今見るべき10の良い科学ニュース
外出が制限されてる?お家で堪能できるアニマルキングダム、世界で配信されている7つの動物ライブ放送
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「動物・鳥類」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 3933 points | 死んだ野良のオス猫に寄り添い離れようとしない子猫。このオス猫は子猫の父親代わりだった | |
2位 2937 points | 中世のペスト専門医師が着用していたマスク(ドイツ医学史博物館) | |
3位 2552 points | 差別的なメッセージは猫で封印にゃ。猫のステッカーで差別を覆うムーブメントが世界各地で発生中 | |
4位 2523 points | 「安心してください。顔はきれいですよ」散歩から戻った犬、顔以外は泥まみれだった件(フィンランド) | |
5位 2490 points | ガーナの映画ポスターが別の意味でコレクションしたくなる件 |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
ちょいちょいAIかと疑うわ
2. 匿名処理班
最低
3. 匿名処理班
フォロワーほぼ0でも2万rtとか稀にあるし、どんな呟きでもバズる可能性はあるから良いニュースでも悪いニュースでもデマ流すのは良く無いわ。
4. 匿名処理班
ソースはツイッターとかいうソースは2ch的なもの
5. 匿名処理班
イルカって聞いてへーそうなんかーくらいに思ってたし
フェイクでしたって聞いてもへーせやったんかーくらいのリアクションしかとれなくない?
6. 匿名処理班
いい話?でもフェイクは止めた方がいいと思うな
特にこういう時は
7. 匿名処理班
>こんな時期だからこそ、喜びをもたらす何かを共有したくてツイートしました。
>誰を傷つけるつもりも問題を引き起こすつもりもありませんでした。
>このツイートには前例のない「いいね」やリツイートを受け取りました。あくまでも個人的記録なので削除もしたくないし、その予定もありません。
大臣の偽ツイート然り、情報の鵜呑みは危険だという好例
kaveri氏のツイートを見るとこの手の人間はホント珍しくないなと
自覚の有無は別として問題があった場合でも平気で居直る
そして社名を出したTVや新聞も同じ様なミスをする
正しい情報を選り分けられる目を個人で持つ時代なのだと思う
8. 匿名処理班
ヴェネツィアにイルカはいない。いいね?
9. 匿名処理班
うそつきは泥棒のはじまり
10. 匿名処理班
まだ猫の親子とかのほうが良かったな
後味悪すぎる
11.
12.
13. 匿名処理班
このニュースみたとき、警戒心が強いイルカがわざわざ来るかな?好奇心の方が強いから来るのか?
んー。ま、行ったことないから知らんがな。
イルカに興味はあるが、イタリアの環境にはあまり興味がない。どっちでもいい自分。←グレタに怒られちゃうね。
14. 匿名処理班
銭形「ばかもーん!そいつがルパンだ!」
15. 匿名処理班
カーボンカルトな連中には経済活動の停止で自然がマッハで回復はお気持ち的に最高だろうなと
16. 匿名処理班
何でもかんでも疑ってたら話にならんし進まんし、そうなったらそうなったで信じる大切さがどーたらあーたら反吐たれるんだろ。
調子に乗りすぎ。
17.
18. 匿名処理班
「運河の水が透明度を増したのは事実」と言っても、新型コロナウイルスで舟の航行が少なくなって浮遊物が沈殿しただけだそうだ。
19. 匿名処理班
この人の承認欲求は満たされたけど
その喜びを共有することは誰一人出来ないだろうね
20. 匿名処理班
/⌒ヽ
∩ ^ω^) な ん だ
| ⊂ノ
| __⊃
し′
/⌒ヽ
(^ω^ ∩ う そ か
(⊃ |
⊂__ |
`J
/⌒ヽ
( ) おっおっ
/ _つ おっ
(_(_⌒)′
∪(ノ
21.
22. 匿名処理班
なんか傷つくね。
これは良くないよ。
23. 匿名処理班
この機会にヴェネチアの運河の底のドロドロを撤去して、綺麗な水を取り戻す作業をして欲しいなあ。
そしたら本当に、イルカも来るかも知れない。
イルカと一緒に運河を渡るとかいいじゃんねぇ。
24. 匿名処理班
あらま。
まーロシアでコロナが発生してプーチンが外出禁止令出して町に800匹の虎とライオンを放ったってデマがロシアのネットで話題になってるらしいけど正直それくらいのわかりやすいデマなら笑えるんだけどねー。イルカの件は…うん。