image by:Sergey Krasovskiy
7000万年前、今のアメリカ南部にあたる地域では、ティラノサウルスの仲間をはじめとする巨大な恐竜が狩りを行っていた。
だが当時、彼らに比べれば目立たなかったかもしれないが、もっと小さなハンターがそこにはいたのである。
体高1メートル、全長2メートルの羽毛に覆われたその肉食恐竜は、小さな見かけであっても決して侮ってはならない相手だった。
スポンサードリンク
チーター並みのダッシュ力と敏捷性を持つ羽毛肉食恐竜
それがニューメキシコ州で発掘されたのは2008年のこと。だが、ドロマエオサウルス科ときちんと特定されたのは、ごく最近になってのことだ。
より一般的には「ヴェロキラプトル」として知られる仲間で、断片的な20点の化石から判断すると、どうやらチーター並みのダッシュ力と敏捷性が自慢で、自分より数倍も大きい獲物を仕留めていたらしい。
この恐るべきハンターには、「Dineobellator notohesperus」という正式な名前が与えられた。その意味は勇ましくも「南西からやってきたナバホ族の戦士」だ。
体の大きさは大型犬くらいで、映画ジュラシック・パークにも登場した近縁種のヴェロキラプトルと概ね同じだが、力や敏捷性では優っていたようだ。
「手や足の爪にある筋肉や腱の付着部の特徴からは、Dineobellatorはほかのドロマエオサウルス科の仲間に比べると、握力が強かったことが窺えます」と古生物学者のスティーブン・ヤシンスキ氏(ペンシルベニア大学)は話す。
Steven Jasinsk
自分より数倍も大きい相手を倒した強靭な力を持つ
後期白亜紀に生息していた小型恐竜の化石は非常に珍しい。おそらくは当時もそれほど一般的ではなかっただろうことに加えて、骨が軽いために長い時間が経過するうちに失われてしまうのだ。
そのため、Dineobellatorの発見はそれだけでも貴重なのだが、この化石からはいくつかとてもユニークな特徴が見つかっている。
Steven Jasinski
1つ目は、ガッチリとした尻尾だ。
ラプトルの仲間は、高速で走るときにバランサーとして機能する長くガッチリ固定された尻尾を持っているのだが、Dineobellatorの場合、ほかの仲間よりもお尻のあたりが柔軟だったかもしれないのだ。
サバンナでガゼルを追うチーターの狩りを思い浮かべてみてください。高速で走るときは、尻尾がピンとまっすぐになっているでしょう。
でもガゼルが方向を変えたら、チーターもまたサッと方向を変えねばなりません。そのとき、尻尾はムチのように曲がって、バランスを拮抗させ、方向舵として方向転換を助けます
要するに、Dineobellatorは猛スピードで走れただけでなく、驚くほど敏捷で、鋭く小回りをきかせては、すばしっこい小さな動物を追跡できたということだ。
だからといって小さな獲物ばかりを狙ったわけでもなさそうだ。
ヤシンスキ氏によると、上半身の力や足からは、群れで行動すれば、自分の体より数倍は大きな獲物ですら倒せただろうことが窺えるという。
Jasinski et al。、Scientific Reports、2020
仲間同士で喧嘩をした? アジアが故郷?
この化石がユニークなのはこれだけではない。そこには怪我の痕が残されていたのだ。
肋骨の部分には傷が治癒した痕跡、爪の部分にはえぐれた痕や穴のような傷跡が見つかっている。どうやらこのラプトルは、エサか交配相手を巡って仲間同士で喧嘩をしたらしいのだ。
さらに恐竜の進化や移住についてのヒントまで与えてくれている。
たとえばDineobellatorは「ヴェロキラプトル亜科」に属するが、このグループは海を渡ったアジアにも生息していた。
つまり、恐竜の時代が終わりに近づいた後期白亜紀にアジアから北アメリカへと渡り、そこで新しい種に多様化していったらしいということだ。
――そして時代は下り、そのうちの1頭が20点の骨となって現代にまで生き残ったのである。
この研究は『Scientific Reports』(3月26日付)に掲載された。
References:newatlas / smithsonianmagなど/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
背骨のトゲで身を守った恐竜の新種が発見される(アルゼンチン)
コウモリのような翼を持つ恐竜の化石が発見される。そこには恐竜が空を飛ぶための試行錯誤の痕跡が(中国)
スコットランドで世界最大級の恐竜の足跡が発見される。
恐竜の新種発見。アメリカ・ユタ州でアジアと北アメリカをつなぐ陸橋を渡った7600万年前の恐竜の化石が発見される
恐竜と鳥をつなぐミッシングリンクはどのようにして発見されたのか?
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
「絶滅・絶滅危惧種生物」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 11059 points | 新型コロナウイルスで活動が制限されたイタリア、ベネチア運河でイルカの姿が発見される | |
2位 3454 points | あなたはできる?一部の人は自らの意思で、耳の中で音を鳴らすことができる | |
3位 2566 points | ガーナの映画ポスターが別の意味でコレクションしたくなる件 | |
4位 1746 points | 肌の色が違う男性からの両手移植手術を受けた女性、手の色が自身の色に変化(インド) | |
5位 1739 points | 生の魚に潜む寄生虫「アニサキス」が激増中。過去50年間で約280倍に(米研究) |
スポンサードリンク
コメント
1.
2. 匿名処理班
ARKの新恐竜
3. 匿名処理班
しあわせは〜 歩いて来ない〜♪
4. 匿名処理班
日本的に言えば
薩摩隼人
…か?
5. 匿名処理班
肉食のダチョウを思い浮かべた
コワイ(;∀;)
6. 匿名処理班
こういう恐竜が滅びずに進化してたら今頃どんな姿になってたんだろう?
7. 匿名処理班
肉は硬めでシャモみたいな風味かもな