旅番組リポーター「本日は魔王城にやって来ました!」
リポーター「さあ、始まりました! 旅番組≪秘境にいこう≫!」
リポーター「本日の≪秘境にいこう≫はなんと――」
リポーター「魔王城にやって来ましたー!」
リポーター「案内役をして下さるのは、魔王さんの側近であるこの方です!」
側近「どうも」
リポーター「本日は人間代表としてたっぷり取材させて頂きます。よろしくお願いします!」
側近「こちらこそよろしくお願いします」
側近「ありがとうございます」
リポーター「結局、勇者は魔王城にたどり着くこともできなかったわけですが……」
リポーター「今のお気持ちはいかがですか?」
側近「これでやっとひと安心といったところですね」
側近「しかし、仮にたどり着けたとしても、勇者が魔王様に会うことはできなかったでしょうね」
リポーター「おおっ!」
側近「今回はそういったセキュリティ面も、差し支えない範囲でしっかりご説明したいと思います」
側近「門番です」
リポーター「門番さんですか、どうもこんにちはー!」
門番「こんにちは」
リポーター「魔王城の門を任されるだけあって、とても強そうですねー。ムッキムキです」
門番「ハハ、ありがとうございます」ムキッ
リポーター「おっ、ポージングをいただきました!」
門番「大変ですね」
門番「24時間寝ずに番をしなければなりませんし、いつ敵が襲ってくるかという緊張感もあります」
リポーター「そうですよねー。気の休まる時がなさそうです」
門番「しかし……だからこそ非常にやりがいのある仕事だと感じています」
リポーター「これからもお仕事頑張って下さい!」
側近「それでは城内へご案内します」
リポーター「わっ、広い!」
リポーター「想像通り、おどろおどろしい内装ですね」
側近「我々魔族はこういう装飾を好みますので」
リポーター「しかし、たとえばあの絵画など、非常に高い芸術性を感じます」
側近「魔王様のご趣味で、魔界の芸術品を広く取り揃えてあるのです」
リポーター「まるで一流の美術館にいるようですよ」
リポーター「え?」
側近「罠がたっぷりありますから」
リポーター「えっ……」
側近「たとえば、あそこの通路」
側近「魔族以外の者が通ると、刃が落ちてきて体を切断されます」
リポーター「ひええ、恐ろしい……」
リポーター「ここは……」
側近「溶岩地帯です」
リポーター「暑い……。これは……落ちたら助かりませんね」
側近「たしか勇者も火山に落下したと聞いています」
リポーター「ええ、魔物の大群に追い詰められて……」
側近「ここは足場が崩れやすく設計されてるので、勇者が火山に落ちなくてもここで落ちた可能性が高いですね」
リポーター「正しい場所を踏まないと、真っ逆さまというわけですか」
側近「ちょっとやってみましょうか」サッ
ウイイイイイイン…
ズンッ!
リポーター「おお~、すごい仕掛けですね!」
側近「これに押し潰されたら、鋼鉄のゴーレムですら鉄板になってしまいますよ」
リポーター「その圧力を利用して、製品を作ることもできそうですね」
側近「なかなか面白いアイディアですね。魔王様に提案してみましょう」
側近「ものすごく複雑な上、少しでもルートを外れると罠が待ってますので、ちゃんとついてきて下さい」
リポーター「は、はい」
スタスタ… スタスタ…
スタスタ… スタスタ…
スタスタ… スタスタ…
側近「もうすぐ出口です」
リポーター「ただ歩いてただけなのに、脂汗まみれですよ」
側近「ここからは比較的安全なエリアですので、リラックスなさって下さい」
リポーター「骸骨が置かれたテーブルがオシャレですね~」
リポーター「今回料理を振る舞って下さるのは、魔界一の料理人といわれるこの方です!」
魔族シェフ「こんにちは」
リポーター「本日はご馳走になります」
側近「さあ、こちらの席にどうぞ」
リポーター「いただきます」モグッ
リポーター「あ、おいしい……! これはうまぁい! 口の中でお肉がとろけます!」
魔族シェフ「人間の味覚に合うよう、アレンジさせて頂きました」
リポーター「ソースがまた濃厚で……いくらでも食べられちゃいます」モグモグ
魔族シェフ「ありがとうございます」
リポーター「側近さんは、いつ頃から側近をやられているのですか?」
側近「ざっと千年前ですね」
リポーター「千年!」
側近「といっても、魔族というのは全て魔王様によって生み出された存在ですから」
側近「人間たちから見ると、私は魔王様の長男という言い方がしっくりくるかもしれません」
リポーター「なるほどー!」
側近「では最後に、魔王様に会って頂きましょう」
リポーター「えっ、よろしいんですか!?」
側近「ええ、魔王様もぜひ取材を受けたいと」
リポーター「ありがとうございます!」
側近「こちらへどうぞ」
リポーター「はいっ! 私、ものすごい胸の高鳴りを感じております!」
リポーター「この後、本邦初公開、魔王さんとご対面します!」
リポーター「はじめまして、旅番組≪秘境にいこう≫です」
リポーター「本日はよろしくお願いします」
魔王「うむ。側近よ、お前は下がれ」
側近「はっ!」
リポーター「いやぁー、やはり魔族の長となると、威厳がものすごいですね」
リポーター「こうして向かい合ってるだけで凍りつくようです」
魔王「ふふ……そう恐れるでない。楽にせよ」
リポーター「は、はいっ! ではいくつか質問させて頂きます!」
魔王「そうだ」
魔王「……と言いたいところだが、ワシの実力は側近や他の幹部とそう変わらん」
リポーター「そうなんですか!」
リポーター「ということは、カリスマ性で魔族を統治されているということでしょうか?」
魔王「むろん、それもあるのだが……」
リポーター「はい」
魔王「ワシが死ねば、全ての魔族は滅ぶのだ」
リポーター「ほう……!」
魔王「魔族というのは元々はワシが生み出したものであるからな」
リポーター「ああ……側近さんもおっしゃってましたね」
リポーター「だから、あまり前線には出ず、魔王城で暮らしておられるわけですか」
魔王「そういうことだ」
魔王「ふふ……驚いたであろう」
リポーター「こんな格好して、リポーターに扮したかいがあった……」
魔王「?」
ズバァッ!
魔王「ぐ、ぐおっ……!」ガクッ
リポーター「流石の魔王も、不意を突かれちゃ脆いもんだな」
魔王「き、貴様……ッ! この剣さばき……ま、まさか……!?」
リポーター「ああ、俺は勇者だよ」
リポーター「そして、人間の全面降伏を見届けた後、旅番組リポーターになりすまして取材を申し込んだ」
リポーター「“魔王さえ倒せば”という一縷の望みに賭けてな」
リポーター「案の定、勝利ムードに酔いしれたお前らは、負け犬丸出しで低姿勢な俺をここまで迎え入れてくれた」
魔王「ぐ、ぐう……ッ!」
リポーター「お前を殺せば魔族は全滅するんだろ? この戦い、どうやら人間側の逆転勝利で終わりそうだな」
魔王「こんな……こんなやり方で、ワシを狙うとは……なにが勇者だ……! 恥を知れ、恥を!」
リポーター「……」
リポーター「≪卑怯にいこう≫だ」チャキッ
ザンッ!
― 完 ―
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コメント一覧 (13)
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- 2020年04月19日 20:07
- 最後の方でやっと気づいたけど、カンいい人なら序盤に気付きそうだなw
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- 2020年04月19日 20:08
- 座布団一枚
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- 2020年04月19日 20:45
- アイデア自体はまぁありがちではあるけど不問として、魔王が会ってくれる保証も側近が席を外してくれる保証も無い、全てが偶然でなりたってるせいで、とってつけたオチになってるのが駄目。
こういうオチにするなら、リポーター側から側近が席を外すように誘導したり、魔王が是非とも会いたいと申し出てくるような何かを提案しなきゃ駄目だろ。
推理小説でこんな叙述トリックやったら馬鹿にされるぞ。
-
- 2020年04月19日 22:08
- >>3
推理小説じゃないんだけど?
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- 2020年04月19日 20:58
- 序盤で気付いたけど、まさかマジだったとは思わんかった
オチも最悪だし読後感も最悪
-
- 2020年04月19日 20:59
- 普通に旅番組やらせてたら面白かったのに
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- 2020年04月19日 21:12
- リポーターのフリした偵察隊かと思ったら勇者本人かい
なかなか面白い
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- 2020年04月19日 21:41
- がっかりしたけど卑怯にいこうは好き
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- 2020年04月19日 22:04
- (´ε`;)ウーン…
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- 2020年04月19日 22:48
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- 2020年04月19日 23:02
- ワイは好き
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- 2020年04月19日 23:17
- 卑怯にいこうwww
-
- 2020年04月20日 00:09
- これは視聴者大激怒で勇者迫害ルート不可避ですわ
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