アインシュタインの正しさが証明される
チリ、アタカマ砂漠にあるヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTは、そのファーストライトから20年以上をかけた観測の末に、天の川の中心にある超大質量ブラックホールとその周囲にある恒星がダンスをする姿を明らかにしたという。
その恒星「S2」の軌道は、まるで宇宙に花弁でも描いているかのようなロマンチックなものだった。そして同時にアインシュタインの一般相対性理論から導き出される予言の正しさを裏付けていたという。
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「一般相対性理論の予言によれば、ある天体が別の天体を周回する束縛軌道は、ニュートン力学が述べるようには閉じておらず、公転面で歳差運動をしています」と、マックス・プランク地球外物理学研究所(ドイツ)のラインハルト・ゲンツェル氏は話す。
この有名な予言は、まず太陽を公転する水星の軌道で発見され、それが一般相対性理論の正しさを裏付ける最初の証拠となった。
「それから100年後、同じ効果が、天の川の中心にあるコンパクトな電波源いて座A*を周回する恒星の軌道で検出されました。」
Detection of the Schwarzschild precession in the orbit of the star
S2 near the Galactic centre massive black hole
https://www.eso.org/public/archives/releases/sciencepapers/
image by:L. Calcada/ESO
一般相対性理論の正しさを検証する3つのテスト
アインシュタインが一般相対性理論を考案したとき、その正しさを証明する方法として3つのテストを提唱した。
1つ目は、太陽による光の偏向の観測だ。一般相対性理論によれば、大きな質量を持つ天体は時空を歪めるので、そのそばを通過する光は曲がって進むはずだった。これは1919年の日食で確認され、アインシュタインは一躍時の人となった。
水星の近日点歳差運動 / Rainer Zenz/Wikimedia Commons
2つ目は、強力な重力場における光の重力赤方偏移の観測だ。重力赤方偏移とは、重力の影響で光の波長が赤に近い方にズレる現象で、音でいうドップラー効果と似たようなもの。これは1954年に白色矮星の光で確認されている。
そして3つ目は、水星の公転軌道が歳差運動であるという観測だ。
歳差運動とは、ちょうどコマのように、回転軸が円を描くように振れる運動のことだ。
水星の軌道は、一見したところ楕円のようでありながら、実際は近日点(太陽に一番近づく点)が少しずつズレており、歳差運動をしているように見える。このために、水星の公転軌道は19世紀の天文学者にとって大きな謎であった。
19世紀の数学者ユルバン・ルヴェリエは、ニュートン力学にしたがい水星の軌道を計算しようと試みて失敗。結局、計算結果と観測された水星軌道とのズレは、未知の惑星バルカンが存在するためであると主張した(なお、彼は同様の手法で、まだ未発見だった海王星の存在を予測している)。
しかしバルカンが実際に観測されることはなく、ついにニュートン力学が不完全であると唱えるアインシュタインが登場したのである。彼の一般相対性理論ならば、不可思議な水星の軌道を完璧に説明することができた。
ESO/L.Calcada/spaceengine.org
超大質量ブラックホールを周回する恒星の歳差運動
このように一般相対性理論は、これまで幾度もその正しさの検証をパスしてきたのだが、天文学者は相変わらずその検証を続けている。
なぜなら、太陽系の外側にはまた違った環境が存在するかもしれないからだ。たとえば、超大質量ブラックホールが作り出す激烈な重力の中では、物理法則はまた違ったものになるかもしれない。そして、いて座A*とその200億キロ圏内にまで接近するS2は、それを調べる格好の実験場だった。
1998年のファーストライト以来、S2の観測を行ってきたVLTだが、2018年にその重力赤方偏移を観測。赤外線を利用した観測によれば、光の波長がズレる様子は、一般相対性理論が予測したものとぴったり一致していたという。
さらに330以上の観測データに基づき、S2の軌道を正確にマップ化することにも成功した。その結果もやはり、相対性理論の予測通り、S2がブラックホールに接近するたびに、重力の影響でわずかに軌道がズレていることを示唆していた。
S2はいて座A*を16年かけて1周しているが、その軌道はまるで花弁を描いているようだ。
天の川の中心にある超大質量ブラックホールを周回するS2の軌道イメージ。ブラックホールに接近するとその重力によって、S2の輝きは赤色寄りに偏移する。
image credit:ESO/M.Kornmesser
次世代望遠鏡の登場に期待
今後の研究は、2025年からの運用が予定される次世代超大型望遠鏡E-ELTにバトンタッチされていくとのこと。
「運が良ければ、ブラックホールの自転すら感じられるくらい大きく接近した星を捕捉できるかもしれません」と、ケルン大学(ドイツ)のアンドレアス・エッカルト氏は語っている。
これができれば、いて座A*の自転と質量を計測し、さらにその周辺の時空まで定義できるようになるという。
「それはまた違ったレベルでの相対性理論の検証になることでしょう。」
この研究は『Astronomy and Astrophysics』(4月16日付)に掲載された。
References:arstechnica / sciencedaily / sciencenews/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
私はブラックホールのような場所でも「質量によって深さとそれに見合った領域がある」と思っているよ。
そうでないと地球のような場所ですら中心が点だとするなら重力が無限大になるから。
案外、ブラックホール内部でも一般相対論は使えるというのが私の確信。
2. 匿名処理班
大きな質量を持つ天体は時空を歪める
記事を読んでも俺の脳味噌はこのへんで「芸術は爆発だーっ」て感じになる
3. 匿名処理班
歳差運動するヤツはブラックホールとダンスっちまったのさ
4. 匿名処理班
地面掘っていけばどんどん重力が強くなるとでも思ってるんだろうか?
5. 匿名処理班
結論、ドイツ人は凄い
6. 匿名処理班
まじかよ、グッドラックとダンスっ地待った感じか?(物理苦手)