ブラックホールに引き戻される光
ブラックホールの重力は、光すら逃れられないほど巨大なものだ。だが、絶対に引き返せない境界から少し離れた、ブラックホール周辺を渦巻く物質の円盤の中からなら脱出も可能だ。ブラックホールがまったくの暗黒ではなく、明るいX線で輝いて見えるのは、これが理由だ。
『The Astrophysical Journal』(3月27日付)に掲載された研究は、円盤の中であってもブラックホールの化物じみた重力に負けて逆戻りし、だが最終的には円盤に跳ね返って逃げ出す光があるという科学的証拠を提示している。
1970年代にはすでに予言されていた現象だが、ようやく実際に観察されたとのことだ。
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ブラックホールとそれに食われる恒星の連星
カリフォルニア工科大学(アメリカ)の研究グループによるこの発見は、2012年に運用終了したNASAのX線天文衛星「RXTE」が集めたデータの分析からなされた。
観察されたのは、「XTE J1550-564」という、太陽に似た恒星とそれを周回するブラックホールで構成されるX線連星だ。
このブラックホールは片割れである恒星を食べながら、自身を取り巻く平らな構造——「降着円盤」に物質を吸い取っている。
研究グループが螺旋を描きながらブラックホールへ向かうX線光を詳しく調べたところ、それが円盤へ引き戻されるように曲げられながら、結局はこれに反射して逃げ出したらしいサインが見つかった。
こうした逃げ出す光があるために、本質的に降着円盤は発光しているのだそうだ。
Evidence for Returning Disk Radiation in the Black Hole X-Ray Binary XTE J1550–564 - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-4357/ab7afc
NASA/JPL-Caltech
一般相対性理論の間接的な証拠
研究グループによると、このサインは、一般相対性理論の間接的な裏付けでもあるという。
また将来的には、現段階ではほとんど理解されていないブラックホールの回転速度の計測にも役立つとのことだ。
ブラックホールは非常に高速で回転している可能性があり、光をただ曲げるだけでなく、捻るような効果もあると考えられるのだそうだ。
References:Black hole bends light back on itself/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
宇宙に関する出来事はプロの精鋭部隊に
観測されているはずなのに、いつも
文字情報にイメージCGしかないので、
妄想で語ってるだけなのではと思う事が
あります。この人達がうそをつくわけない、
見間違いや勘違いもありえないという
信頼はどこまで信頼できるのでしょうか。
と、
2. 匿名処理班
知らなかったのか…?
ブラックホールからは逃げられない…!!
3. 匿名処理班
3次元的にイメージできない。
動画とかそのうちTVでやらないかな。
4. 匿名処理班
なるほどまったく分からん
5. 匿名処理班
これは重力レンズとは別の効果なん?
6. 匿名処理班
なるほどねえ自分で自分を直射日光で炙ってるようなもんか。そりゃあ常識はずれな高温にもなるわな。
※5
同じだよ
7. 匿名処理班
光は空間が曲がることで吸い込まれてる筈なのに、降着円盤に反射して重力から逃れられるってのが
凡人の頭では追いつきません(^ρ^)
8. 匿名処理班
※1
宇宙に限りませんょよ
素粒子物理学や遺伝子工学、医学でも先端科学のほとんどは文字で発表されます
素人がひと目で見てわかる写真がある発見はごくごくまれです
どこまで信用するのは自分で判断して、その後の経緯を見守るしかありません
過去にも正しいとされた発見や学説が実は間違いであったと言う例はたくさんあります
ただし相対性理論等の現在根幹になっている理論は数限りなく反論がでて、それらの全てを打ち負かしています
9. 匿名処理班
※1
論文には査読という第3者の検証システムがあるので、明らかな間違いはそこで指摘されます。
まあ難しい検証はその道のプロにお任せするとして、私も含め、論文を読破するなんてムリ〜な人がその説を支持するかどうかを判断するなら、比較的読みやすい科学雑誌(Newtonや日経サイエンスなど)や、ブルーバックスなどを読んでみるといいかもです。
この記事の例のように、ブラックホールや超新星爆発のような、一般読者の興味を惹きやすいテーマは数多く取り上げられるので、それらと比較してみるのもひとつの方法かと。
紹介された記事は一応専門家のチェックが入っているので、少なくとも妄想レベルのものは弾かれ、それなりの信頼度はあります。定期的に読んでいると、以前の結論を覆す結果などが出たり、特に新しい発見や知見ほど、様々な仮説が乱立します。
どれが正しいか誤りかは「すぐ確定されるもの」というよりは「今現在有力なものと、そうでないもの」が混じり合っているという、あくまで流動的なものということが、傍目にも理解できます。
もちろんSTAP現象のように、論文に不正が発覚したりして後に全否定されてしまう場合もあるので、100%完璧ではないです。
10. 匿名処理班
そりゃあ重力レンズっていう効果もあるくらいだから、光を捻じ曲げたり捻ったりできるだろうね