南極に南米のカエルが生息していた!?
南極に生息する動物と聞けば、ペンギンやアザラシあたりが頭に思い浮かぶだろう。だが、かつてこの大陸は温暖な熱帯雨林におおわれており、暖かい環境を好む動物がいたのだ。
新しく発見された4000万年前のカエルの化石も、そのような動物の1種だ。
『Scientific Reports』(4月23日付)に掲載された研究によれば、その化石は「南極で初めて発見された両生類」であるそうだ。
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南極で発見された南米のカエルの化石
ほんの数ミリのそれは、カエルの頭蓋骨と腰の骨の一部。現在でも南米アンデス山脈に生息している「ヘルメットガエル科」の仲間だと推測されている。
化石が発見されたのは、南極半島の先端に位置するシーモア島。2011〜2013年にかけて行われたアルゼンチンとスウェーデンの共同探検で採取された堆積物サンプルの中に含まれていた。
だが、そもそもその探検で目的としていたのは、まだ暖かかった南極で生きていた哺乳類を見つけることだったのだ。予想外の発見に研究者も驚いた。
島で採取された堆積物をふるいにかけながら、何か面白そうなものが混ざっていないか調べていると、意外や意外、そこに珍しいカエルの骨があったのだ。
image by:Thomas Mors
カエルの古代史の鍵となるか?生態系史の空白を埋める化石
南極が超大陸パンゲアの一部だった三畳紀(およそ2億年前)のカエルなら発見されている。だが、それ以降の両生類の記録は、絶滅したものも、現生のものも含めてまったくない。
新しく発見されたカエルは、5600万〜3390万年前の始新世の時代を生きていた。南極がゴンドワナ大陸南部から分離したときにどのような生態学的な変化が生じたのか、まったく分かっていないが、この化石はその歴史の空白を埋めてくれるものだ。
このときの移動で、南極では気温が低下し、氷河が広まった。そして低温環境に適応できなかった動物が絶滅した。茹でガエルの比喩とは反対に、カエルは凍りついて死に絶えた。
image by:Simon Pierre Barrette and Jose Grau de Puerto Montt, Wikimedia Common
かつて南極は生物多様性の中心だった
たかがカエルかもしれないが、されどその存在が示しているのは、南極大陸が一時期は「生物多様性の中心」だったという驚きの事実だ。
この発見からは、4000万年前の南極にはまだ温暖な森林と淡水環境が豊富にあっただろうことがうかがい知れる。
そうした生態系は、もしかしたらこのカエルの近縁種が今も生きている南米の森林地帯に似ていた可能性もあるとのことだ。
First fossil frog from Antarctica: implications for Eocene high latitude climate conditions and Gondwanan cosmopolitanism of Australobatrachia | Scientific ReportsReferences:vice / sciencenewsなど/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41598-020-61973-5
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コメント
1. 匿名処理班
ようその骨に気付かれましたな!
2.
3. 匿名処理班
文明の痕跡はよ
4. 匿名処理班
本当にパンゲアの名残?
ポールシフト前は暖かかったとかじゃなくて?
5. 匿名処理班
また南極が温暖な地域になる可能性もあるって事ですよね
人間にとって都合のいい自然だけを維持しようなんておこがましいとは思わんかね
あ、だからと言ってCo2をジャンジャン出してもいいと言っている訳ではありませんよ?
6. 匿名処理班
シーモア島は南極から突き出た半島の先っぽ、南アメリカのホーン岬に一番近い場所で普段からかなり暖かい場所だよ
7. 匿名処理班
南米のパタゴニア辺りは南極に近いし気温もほぼ南極と変わらないから
南米の生き物が見つかってもおかしくないなぁ、と思ったけど
カ、カエル…?
8. 匿名処理班
つまり温暖化で氷が溶けても問題ないって事ですよね?