ブラックホールがエネルギー源の地球外文明 / Pixabay
1969年、英国の宇宙・物理学者ロジャー・ペンローズは、ブラックホールにゴミを捨てるとエネルギーを得られるという論文を発表した。
そして彼はこう考えた。宇宙のどこかにはブラックホールをエネルギー源として利用する高度に発達した文明があるかもしれない、と。
当時、これはあくまで思考実験のようなものだった。しかし発表から50年の歳月を経て、ついにその正しさが実証されたようだ。
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ブラックホールからエネルギーを得る方法
ブラックホールの事象の地平面の外側には、「エルゴ領域」という楕円体の領域が広がっている。ここには遠くから見てエネルギーが負になる軌道が存在し、これを利用することでブラックホールの回転エネルギーを外に取り出せると考えられている。
具体的にはこうだ。まず、この領域に物体を落とす。そしてそれを2つに割って、それぞれをブラックホールの回転方向と逆方向に進ませる。
逆方向に進む物体のカケラは、負のエネルギー軌道に乗せてブラックホールに落とす。もう片方の回転方向に進むカケラは、エルゴ領域から取り出して回収する。
すると回収された物体のエネルギーは、ブラックホールの回転エネルギーを得て、2つに割れる以前よりも大きなエネルギーを持っている。その一方、ブラックホールの回転は、エネルギーを抽出された分だけ遅くなる。
これを「ペンローズ過程」という。
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ペンローズ過程の証明法
これはあくまで思考実験であった。だがペンローズの仮説が発表されてから2年後、ヤーコフ・ゼルドビッチというソ連の物理学者が、それを実際に検証する方法があると提唱した。
ゼルドビッチによれば、光波をねじって、適切な速度で回転する金属シリンダーに当てればいいのだという。ペンローズ過程が正しければ、「回転ドップラー効果」のために、光波はシリンダーの回転からエネルギーを抽出しながら反射されるというのだ。
だが、ここでまたも現実の壁が立ちはだかる。この実験を成功させるには、金属シリンダーを毎秒10億回転以上の速度で回転させねばならなかったのだ。
これを実現するのは技術的にかなり難しく、結局ゼルドビッチの証明方法もまた理論上のものでしかなかった。
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光のかわりに音を使うことで証明が可能に
だがグラスゴー大学(イギリス)の研究者によって、ついに実行可能な検証法が考案された。それは光のかわりに音を使う方法だ。音ならば周波数がずっと低いために、実際に実験を行うことができる。
この実験では、スピーカーでねじれた音波を鳴らして、発泡剤で作られた回転する消音ディスクにぶつけてやる。このとき消音ディスクの裏側にはマイクを仕込んでおき、ディスクの回転を加速させながら、ぶつかってきた音を拾う。
もしペンローズとゼルドビッチの理論が正しければ、回転ドップラー効果によって音波の周波数と振幅がはっきり変化するはずだ。
Amplification of twisted sound waves
負の周波数を生み出す回転ドップラー効果
直線的なドップラー効果ならば馴染みがあるだろう。
救急車がサイレンを鳴らしながら接近してくると、聴き手に音波が短い間隔で届くので、サイレンの音程が高まって聴こえる。反対に救急車が遠ざかるときは、音波の間隔が長くなるので、サイレンは低く聴こえる。
回転ドップラー効果もこれに似ているが、その効果は回転する表面に限られている。
面白いのは、回転が十分に速くなると奇妙なことが起きることだ。回転面で測定される音の周波数はどんどん低くなり、やがて正から負に変わるのだ。
実験でディスクの回転を速くすると、スピーカーで鳴った音の音程はどんどん低くなったが、耳に聴こえなくなるほど低くなり、さらに周波数がゼロにまで達すると、今度は音程が上昇したという。
しかも音量まで3割大きくなった。これは負の周波数を持つ音波が回転ディスクからエネルギーを奪ったからだ。
これこそ、ゼルドビッチが1971年に予言した現象であるそうだ。
Pixabay
あとはブラックホールを利用する地球外文明を探すだけ
さて、50年のときを経て、今やペンローズ過程の正しさが証明された。
最後に残された仕事は、ペンローズが想像したように、ブラックホールをエネルギー源として利用する地球外文明の存在を証明することだけだ。
この研究は『Nature Physics』(6月22日付)に掲載された。
Amplification of waves from a rotating body | Nature PhysicsReferences:phys/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41567-020-0944-3
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コメント
1. 匿名処理班
高速回転するものを見てると、ある程度以上の速さになったら反対側に回ってるように見えることがある、ようなもの?
2. 匿名処理班
なるほどね。つまりどういうことだってばよ!
3. 匿名処理班
>あとはブラックホールを利用する地球外文明を探すだけ
それが一番難しいよ!
4. 匿名処理班
ブラックホールエネルギーも良いと思うが、
まずはダイソン球を捜そうや!(そっちの方が捜すの容易そうだし)
5. 匿名処理班
で、その暴走するエネルギーをどうやって利用可能な形に変換するんだ?まずそれからだ
6. ナパチャット
そんなんなら吹き出してるジェットをエネルギーにした方が早いだろ
7. 匿名処理班
ブラックホール「残念ながら、ボッシュート ! ! 」
チャラッチャラッチャーン ミヨヨヨ〜ン
8. 匿名処理班
科学が発展しすぎた文明ってエネルギー源どんなことになってんだろうね
「えっ!?お前の銀河まだダイソン球とかブラックホールとか使ってんの!?おっくれてるぅ〜」
とか言っちゃう文明もどこかにあるんだろうな
9. 匿名処理班
引力を落ちる力と考えるか
引っ張る力と考えるか
そんな感じ?
10. 匿名処理班
ダイソン球でも可。
11. 匿名処理班
質量(エネルギー)を半分失うわけで、残された物を回収したとき、
残った物(初期の半量)に『+100%以上』のエネルギーを得られないと収支が合わないってことになるんだよね?
12. 匿名処理班
「ブラックホールエネルギーを取り尽くして宇宙を崩壊させるな!宇宙人が攻めてくる!」までが定期
13. 匿名処理班
ブラックホールエンジンはバニシングされちゃう
14. 匿名処理班
全恒星がブラックホールになる時代は来るから理論上文明維持可能な事がわかるのはなんか良い
15. 匿名処理班
ブラックホールをエネルギー源にしてる文明から人類を観たら、人間からみたネズミと変わらない。
そして、人間からネズミにコンタクトを取る方法はあるが、ネズミから人間にコンタクトを取る方法はない。
人間がネズミに科学技術を授けるシステムは創り出せるが、脅威になる可能性があるので実験的にしかしない。
こんな感じやろうな。
16. 匿名処理班
これってエントロピーの高いゴミを投入して、エントロピーの低いエネルギーを得られるの???
17. 匿名処理班
現状を鑑みるとブラックホールからエネルギーを取り出せる装置を作り出せるほど文明が発達する前に資源不足で滅びるのが知的生命体の末路な気がする
18. 匿名処理班
そんな技術を待つやつらが簡単にしっぽを見せるとは思えない。探査できてない見た目だけ観測できてる惑星が実はバリアかホログラムで覆われててその下に住める環境が(ry
まぁそんな話は置いといて。ほんとにそんな技術持ってる他の惑星の星人?がいてもせいぜいUFO飛ばすくらいで干渉はして来ないだろう。もしくはそういう宇宙規定なのかも知れんし。地球人野蛮やし…
19. 匿名処理班
なるほどな
フハハハ