テクノロジーによって絵の下に隠されている秘密が明らかになったというエピソードはこれまでもお伝えしているが、今月海外で1600年代初めの古い絵が、息を吹き返したかのごとく鮮やかな色彩をあらわにした動画が注目を集めている。
これはイギリスの美術の専門家がシェアした作業の様子で、およそ200年も塗られたままだった保護用のニスを溶かし、これまで隠されていた絵の素顔を明らかにしたものだ。
この驚きの結果を見たネットユーザーの間では「あらやだびっくり!」「こんなんだったんかい!」と、その動画が次々とシェアされまくってるという。
◆追記(2020/07/01)記事を再送してお届けします。
A remarkable Jacobean re-emergence after 200 years of yellowing varnish
美術の専門家がツイートしたニス落としの作業
この動画はイギリスで美術商や鑑定士として活躍し、美術品の真贋を見抜くTV番組のホスト役としても有名なフィリップ・モールドが、今年11月に投稿したツイートがもとになっている。
作業前の絵
In response to those wanting sight of the uncleaned image of the #womaninred. All we know is she is 36 and it was painted 1618 (inscription) pic.twitter.com/3k8GYxvyJK
— Philip Mould (@philipmould) 2017年11月7日
モールドによると、この絵はかつてイギリスで個人が所有していた「Woman in Red」という作品で、描かれたのは1618年、モデルの女性は当時36歳であることがわかっているそうだ。
そしてこの絵にかけられていたニス(ワニス)はなんと200年も前のものだという。
A remarkable Jacobean re-emergence after 200 years of yellowing varnish 1/2 pic.twitter.com/yBGNGDcNd7
— Philip Mould (@philipmould) 2017年11月6日
200年前の黄色いニスが半分になりジャコビアン時代(1603年 - 1625年)の絵が復活した
作業はどんどん進み、最後のニスをふき取るところ。
汚れが落ちる洗剤CMもびっくりの変わりよう!
A last smear from the chin removed. I will post an image of the completed picture as soon as it is ready. pic.twitter.com/K7TSl2XdqE
— Philip Mould (@philipmould) 2017年11月6日
あごの部分のニスをふき取る。全部済んだらあとで完璧になった絵をツイートするよ
これ系の作業ではまれにとんでもない間違いが起きたりするらしいが、繊細な熟練の技をもつモールドはうまくやったようだ。
美しい肌をもった女性の顔が現れた!
全貌はまだ先の予定だが、彼は一部の肩の部分もちょっとだけ公開。細かな模様が描かれているのがわかったという。
Small area of her astonishingly elaborate dress revealed. We dont know identity yet but certain iconographic clues are staring to emerge.... pic.twitter.com/2p1VqN79na
— Philip Mould (@philipmould) 2017年11月6日
この作業で、驚異的に精巧に描かれていたドレスの一部が明らかになった。まだはっきりとはわからないが特定の図柄の手がかりが見えてきたぞ・・・
長年経つと塗りなおされる保護用のニス
ファインアートは多くの場合、家具と同様にコーティングされている。保護用のニスはホコリや汚れ、ダメージを軽減する効果がある。
だが、こうしたニスは時間とともに黄変し、数世紀もたつと見事な色もくすんで見えるようになる。そしてあまりに絵が見苦しくなってくると専門家がこれを取り除き、新たに塗り直すものだという。
芸術の貴重な価値を失うことなくこのニスをうまく消すために修復師がとる方法は、熟練の技と企業秘密でできている。が、そのなかの一つに溶剤とその中和剤、そして2つの綿の欠片を使う方法があるそうだ。
それは綿の1つをテレピン油のような溶剤につけてニスを溶かすのに使い、もう1つを中和剤につけて、溶剤が絵全体に広がらないように抑えながらながら作業するやり方だ。
ニスだけを落とす特殊な混合物
だが彼が使用したのはゲルと溶剤の特殊な混合物で、あらかじめ前日にオーク材のパネルに塗った油でテストを行い、翌日慎重にこの絵に取り掛かった。
彼によると、その混合物はそのニスを除去するためだけに作られたもので、下の絵を損なうことはないという。
このようなゲルの使い方は近年かなり進んでおり、通常の復元とはまた違い、ゲルで溶剤を浮かせるタイプの調節しやすいものだそうだ。
こんなにカラフル!ユーザーが驚きの結果をリツイート
長年人目に触れることがなかった絵画の美しい素顔を目撃したユーザーからはこんなツイートが寄せられた。
I’d watch the heck out of an art restoration stream https://t.co/CNIYJEq2iy
— Lily Nishita (@lilynishita) 2017年11月6日
とんでもない修復方法を見たぜ・・
me taking my makeup off to reveal another masterpiece https://t.co/tfBcfVrDcs
— billy🥀 (@oraltwjnk) 2017年11月6日
私もメイク落としたらすごいの出てくるよ
This makes me break out in a sweat... https://t.co/Tw9i3GzJrh
— Duncan Jones (@ManMadeMoon) 2017年11月7日
これヒヤヒヤするんだが
Me too. You can't help but think of this... https://t.co/eQMYMdZzE1
— Helen Grieve (@grieve51166) 2017年11月7日
同じこと思った。もし上の絵みたいになったらと思うと・・
How is this accomplished without damaging the painting beneath? This is amazing to watch! Would love to see a time lapse!
— YarnGeek (@YarnGeek) 2017年11月6日
どうやって下の絵をダメにしないでできるんだろう?すごい作業だな!タイムラプスで見れたらなあ!
The varnish yellows with age, effects of smoke from candles, dirt, daylight etc.
— Nichola Jeans (@NicholaJeans) 2017年11月6日
経年のニスの黄色は、キャンドルの煙や汚れや日光とかの影響もある
This looks so satisfying I think I need to do it for a living https://t.co/avrRCaFkJw
— Anita Singh (@anitathetweeter) 2017年11月6日
すごくすっきりした!これ実際に見たいわ
Like jet washing a patio.
— John Mackin 🇪🇸 (@mackin_john) 2017年11月6日
ベランダとかをきれいにする高圧洗浄機みたい
これな
via GIPHY
Amazing Philip, she is looking stunning! Her skin tone and the earring are magnificent. What a transformation!
— David Hudson (@BrummieDavid) 2017年11月6日
フィリップすごい。彼女がすっかり見違えちゃったね。肌のトーンやイヤリングが輝いてる。まさに変身ってやつだ!
ずっとかかっていた暗いベールがはがれ、美しい姿を見せた絵画。それなりに高度なスキルと経験が要りそうだけど、ロマンあふれる仕事じゃのう。
via::twitter / twistedsifter / sploid / distractify / laughingsquid / boredpandaなど / translated by D/ edited by parumo
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コメント
1.
2. 匿名処理班
顔から作業はじめるの?!
自分なら隅っこでおそるおそるためしてしまう
3. 匿名処理班
イヤリングの宝石の輝きに魅了された。
4. 匿名処理班
ボッティチェリの「プリマヴェーラ(春)」も、絵の洗浄によって足下の様々な花が再び画面に現れたんだよね。作者の描いた頃の絵をまた見られるっていいね
5. 匿名処理班
見ていて気持ちいいなww
6. 匿名処理班
他所で見た時に、汚れにしては絵の具が侵食されずにキレイに落ちるもんだなと思ったけど
最初から塗り直す前提で塗ってるものだったのね
7. 匿名処理班
文字通り一気に若返った感
8. 匿名処理班
油絵はきちんと手順を踏めばかなり耐久性が高いからね
一見アレな感じでもアカデミックな教育を受けてた作家の絵は
この辺の処理が割としっかりしてる
逆にこの辺いい加減な作家は画面の剥離が激しい
9. 匿名処理班
一番に、紹介されてた失敗作を思い出したよ。
つまりニスはタイムカプセルってこと?
しばらくしたら、また塗って保存するのかな。
10. 匿名処理班
※8
落とし終わったらまたすぐに新しいの塗るんじゃない?
劣化はどうしたって起こるわけだし
11. 匿名処理班
上のコメントでもあるけど、さすがに顔からニス剥ぎをするのが違和感。レプリカを用いたデモの為の動画では?
12. 匿名処理班
これはニスの威力が凄いってことだよな
13. 匿名処理班
※9
現代の技術なら透明度の高くて電磁波の影響にも強く耐久性のあるニスも出来るだろう。
過去は過去と言いつつ、矢張り美術品の類いは綺麗に残しておきたいね。
14. 匿名処理班
>私もメイク落としたらすごいの出てくるよ
うおお
15. 匿名処理班
これで顔のシミが落ちたりは・・・しないよね;
16. 匿名処理班
他所のサイトでこの話読んだらフェイクだと断定されてたけど真偽はどうなんだろ。パルモ殿、追跡頼みます。
17. 匿名処理班
ギャラリーフェイクでやってたなw
18. 匿名処理班
例のキリストの絵も上から描かれた奴だけ消したら元にもどらんかな
19. 匿名処理班
大丈夫なんだろうとわかっていてもかなり大胆にしかもガシガシお顔からってすごいわ。
顔色もだけどやっぱ装飾品やドレスの柄がもっと鮮明に見えてさぞやキレイだろうね。
20. 匿名処理班
保護剤が保護の役割を果たしてたんだねえ
21. 匿名処理班
この仕事やって暮らしたいw
22. 匿名処理班
アメイジング
23. 匿名処理班
技術の進歩と本当のプロって凄いな、、。
予算とか技術的に厳しい事もあるだろうけど、とんでもない失敗やらかしたものとか直せないのかな。この先直せるようになったりもあるのかな。
24. 匿名処理班
ニスで封じ込めるって何か接木バラのパラフィン付けやチーズの鑞付けみたいな感じだなw
逆転の発想として修復時に意図的に消える絵を描くヤツやニスの積層だけで作品を描くヤツが現れるかもな
25. 匿名処理班
このニス塗った人も相当なプロフェッショナルだったという事か
26. 匿名処理班
オリジナルの作品を描かれた当時の状態に限りなく近く修復してみれるのは素晴らしいことだと思う。ただ・・・これは、あくまで個人的意見なのだが、経年劣化して色あせたかんじもまたこれはこれで重厚な感じをかもし出していて好きだ。近年、技術が著しく発達して、日本のお寺でも、やたらきれいに復元したりするのがどうも好きになれない。あまり人が訪れないような、時の流れに忘れ去られたような塗装のはげ落ちたお寺などの落ち着く感じって、心が満たされるようでなんともいえない風情があっていいもんだ。もちろん復元による完全再現もとても大事なんだろう。頭ではわかっているんだが、なにか精神的な、もっとこうなんか人間の本質的なところでなにか大事な何かが抜け落ちたような感じがしてちょっとがっかりするような気がする。多分ただの感傷なのかもしれん。すまん。年のせいか感傷的になった。ゴホ、ゴホ
27. 匿名処理班
今で言うなら作品の上からクリアコート吹くようなものだね
黄変しないニスがあれば塗り直す必要も無いのにね
28. 匿名処理班
※26 わかるよ、その気持ち。
いい感じにエイジングしてるのが落ち着くよね。
ただ日本は木造建築が多いから、朽ちると困るしねー。
何かで読んだんだけど、日本島国だし、
他国の文化に押し寄せられる歴史がなかったから、
火事なんかで消失してもまっさらな新品を建てるのに
比較的抵抗がないのでは、という識者説。
イキナリ真っ赤な五重塔とかびっくりするよね。
29. 匿名処理班
>me taking my makeup off to reveal another masterpiece
>私もメイク落としたらすごいの出てくるよ
ワロタw
別のマスターピースってw
30.
31. 匿名処理班
保存が不適切だったせいで贋作扱いされて捨てられた絵が大量にあるんだよな
32. 匿名処理班
ヘー!そんなんあるんだ。31さん、できたらちょっとだけkwsk。
33. 匿名処理班
※18
あれは素人が直にペンキ塗りたくったようなものだから
普通なら修復年代がわかるように一度クリアなのを挟んで落ちるように修復するんだけど
でも一応あれはあれで修復しよう(おばあさんが塗った部分を落とそう)と試みてるんじゃなかったっけ?
34. 匿名処理班
棒でガリっと行かんか怖かったわ
35. 匿名処理班
金の亡者が、オリジナルのニスがまだたっぷりと残っているのに、オークションのために、あられもないニスをイタリアン・オールド・ヴァイオリンにコーティングして、だいなしにする輩がいるかと思えば、素晴らしい技術でニスを取り去り、名画を生き生きと蘇らせる技術者もいる。何とも皮肉なことだ。(ぼくは、シルバー・トーン信者ではないけど、素人目にも目に余るものもある。ああーもったいない)
最近(でもないか?)、技術の進歩で、カドミウム・イエローなどに代表される、カドミウムを含む西洋油彩画の褪色劣化を研究していた博士の記事を読んだが、こうした研究を続けていくのに問題となるのは、結局は予算。その限られた予算のなかでも素晴らしい成果が出るのは運によることもあるが、なによりも関わる人たちの熱意だ。こうした美術品などの技術は、医療などのように物理的に我々の命には関わらないかもしれないが、人はパンのみにて生くるものにあらずとも言われるように、心を豊かにしてくれる。せめて賛辞を贈りたい。
36. 匿名処理班
モナリザとかもツルンとしたタマゴ肌になって印象変わりそう
37. 匿名処理班
※2
拭き取った後の微妙に取りきれてないニスとか気になるよね
38. 匿名処理班
佐々木あきかな?
39. 匿名処理班
仏像も全てフルカラー版を作り直して
ほしいんだけど仏像をフルカラーに
戻す権利はロスチャイルド家に
押さえられてるんだよね…。
40. 匿名処理班
肌の質感を絵画として留めたこの当時の絵師の技量が伺えるね。
41. 匿名処理班
よかった!
文化財を台無しにしてしまう素人はいなかったね!
42.
43. 匿名処理班
和紙の出番だな