死の間際、最後まで残る感覚は聴覚 / Pixabay
今際の際にある大切な人への最後の言葉は届いているのかもしれない。新しい研究によれば、臨終の時を迎え、体から反応が失われた人であっても、元々聴覚がある人の場合、聴覚だけは最後まで残っているのだそうだ。
『Scientific Reports』(6月25日付)に掲載された研究では、臨終の際にあるもはや意識が失われた患者の脳を観察し、音を聞いていることを示すサインが確認されたそうだ。
スポンサードリンク
音の変化を感知したときの脳の反応を調査
音にそれまでになかった変化を感じたとき、人間の脳には2種類の反応が生じることが知られている。
まず最初に生じるのが、「ミスマッチ陰性反応(MMN)」と呼ばれるもので、脳シグナルの急激な低下として観察される。
それに続いて生じるのが「P300コンプレックス」と呼ばれるシグナルの急激な上昇だ。これは「P3a」と「P3b」という2種のスパイクで構成されており、前者は音の変化を耳にしてから200〜300ミリ秒後に、後者は300ミリ秒後に生じる。
MMNとP3aは無意識な反応だが、P3bは作業記憶がアップデートされているサインだと考えられている。
意識が失われた患者でも聴覚反応を検出
ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)の研究チームは、すでに意識が失われているホスピスの入院患者に対して、5音だけで構成された曲を流し、その脳の活動を計測するという実験を行った。
曲は同じ音が反復されるだけだが、ときおり音色やパターンが変化する。意識のある人がこれを耳にすれば、その脳には先ほど述べた反応が生じる。
だが実験では、驚いたことにすでに意識が失われている患者までもがMMN反応や、それに続くP3a反応を示したことが確認されたのだ。
これはその人の聴覚が機能しているサインであるという。「こうした患者の聴覚の一部は、正常に近い機能をしているということが分かりました」と、ローレンス・M・ワード氏は話す。
iStock
死にゆく人は言葉を理解しているか?
なお、音が聞こえることと、それを理解していることとはまた別の話だ。意識不明の人の耳に言葉が届いていたとしても、その意味までが理解されているとは限らない。
しかし実験では、意識のない患者5名中2名でP3b反応が検出されている。これは彼らがその音の意味を理解していた可能性を示す初期段階の証拠であるそうだ。
音のパターン変化に対するこうした反応は、もはやコミュニケーションを交わせなくなった患者であっても、その脳がパターンの変化を数えようとしていたことを示すサインかもしれないという。
それが「理解の一形態を示していたとしてもおかしくはありません」とワード氏。
Pixabay
最後の時、あなたの別れの言葉は届いている
もちろん、はっきりと断定できるものではない。そもそも今回の研究は、高次の思考を検出しようと試みたものではないのだ。
今のところ言えるのは、人が意識を失っても、その人へ向けられた最後の言葉は脳のどこかに届いているかもしれないということだ。
「きちんと証明されたわけではありませんが、反応を示さなくなった患者の中には、家族から告げられた言葉を理解できることがある人もいるとは言えるでしょう」とワード氏は言う。
だから、大切な人が最後の時を迎えたら、優しい言葉をかけてあげて欲しい。きっとその人を安心させてあげることができるだろう。間違っても、どうせ聞こえないだろうなどと余計なことを口にしてはいけない――。
Electrophysiological evidence of preserved hearing at the end of life | Scientific ReportsReferences:inverse / iflscience/ written by hiroching / edited by parumo
https://www.nature.com/articles/s41598-020-67234-9#Sec8
あわせて読みたい
臨死体験は本当にある?人は死後も意識があることを示すサイン
死後の世界と生まれ変わり。死後も人生は続くと主張するアメリカの科学者
死後の世界:意識が肉体から分離。臨死体験をした男性の話
「キャラメルサンデーが食べたい」 患者の最期の願いを叶えるため救急車でマクドナルドに立ち寄り、その夢を叶える救急隊員(オーストラリア)
アメリカの死刑囚10人の「最期の言葉」
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「人類」カテゴリの最新記事
「料理・健康・暮らし」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 4121 points | 動物保護施設を訪れた男性に抱きついて離れなかった犬。運命を感じた男性は犬の家族となる | |
2位 3646 points | 100年前の東京の人々の暮らしがカラー映像で鮮明によみがえる(大正時代) | |
3位 2707 points | 今年9月、小惑星が大接近。月よりも近い位置を通過予定(NASA) | |
4位 2666 points | 9900万年前の琥珀に閉じ込められた昆虫。まるでつい最近まで生きていたかのような姿(ミャンマー) | |
5位 2110 points | 生まれてすぐに保護された子猫、保護施設から仮里親を経て永遠の家族の元へ。その家族はなんと!(アメリカ) |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
主人にかけた言葉は「愛してる。ずっと愛してる」だった。とどいていて欲しい。
2. 匿名処理班
「おばぁちゃん、もう頑張らなくていいよ、おやすみ」103歳で亡くなった祖母に最後に言った言葉です、大声で叫んだわけじゃないけど伝わった感じはしてました、聞こえていたんだね。
3. 匿名処理班
優しい言葉をかけてあげてほしい
「友達を起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる(優しい)」
4. 匿名処理班
最期ってわけじゃないけどブラックジャックでも植物状態に見せかけて耳だけ残るってのがあったね
5. 匿名処理班
たとえ間違ってたとしても、誰も不幸にしない話だと思う。
6. 匿名処理班
爺ちゃんが死んだ時、医者の先生から「耳はまだ聞こえるから呼びかけてください」って言われたわ
20年も前だったけど、当時は科学的な根拠は無かったのかな
7. 匿名処理班
大瀧詠一さんの死に際を思い出してしまった
8. 匿名処理班
言う内容によっては仏様を笑顔にできるかも
滑ったら気まずくなりそうで怖いけど
9. 匿名処理班
ワンコもそうかな。
10. 匿名処理班
確かにね、最後に出来た器官だから
11. 匿名処理班
それがどうした 文句が有るかぁ〜〜♪
12. 匿名処理班
父が亡くなる時、看護師さんも「意識がなくても最後まで耳は聞こえますよ。声をかけてあげてくださいね」と言っていた。
その後、葬儀屋さんと雑談していたら、「昔から、亡くなってから数分くらいは耳が聞こえるという話を聞いていますよ」と…
昔の人は、どういうところからそんなことを思ったのだろうか?と不思議に思えた
13. 匿名処理班
胎児の頃に五感のうちで真っ先に機能し始めるのも聴覚じゃなかったっけ?
人間にとって音がそんだけ重要なのかなと素人ながら思った
14. 匿名処理班
ひどい事故にあった人の話でも、意識を失う直前まで残ってる感覚は聴覚だっていう話はよく聞くので、今際の際でも同じというのは納得できるかも。
15. 匿名処理班
寝ている時でも耳から入ってくる情報ってちゃんと理解してるよね
テレビつけっぱなしで寝てたら、ニュースの内容やドラマの会話を勝手に映像化して夢みたいに感じてる事よくある
あんな感じで聞こえてるんじゃないかな
16. 匿名処理班
記事のタイトルが素敵すぎる
17. 匿名処理班
母親が亡くなる直前、呼吸が止まった時に看護師さんから「最期まで耳は聞こえてますから、お別れを言ってあげてください」と言われたのを思い出した。
18. 匿名処理班
聴覚がない人は、お別れの場面でも
別の器官を働かせて何かを感じ取っているのかな
19. 匿名処理班
これはわかる!何度か倒れた事あるけど、目の前は何も見えなくても声は聞こえてた!
20. 匿名処理班
あの日、出張で遠くにいた。
出張なんてめったにないのに、よりにもよってあの日に。
時間が経ちすぎていて、きっと私の声は届かなかった。
次に大切な誰かを送るときは、言葉は無理でも声だけでも贈りたい。