自分の店に火をつけた店主 image credit:Simon Campbell/Facebook
3月末、新型コロナウイルスによるパンデミックが最盛期を迎えていたオーストラリアで、西オーストラリア州の小さな町に1軒しかないスーパーマーケットの経営者が、自身の店に火を放ち、後に逮捕されるという出来事が起こっていた。
この経営者の裁判が最近行われたことで事件の全容が明らかになったのだが、経営者はパンデミックの影響を直接受けて精神的状態が悪化し、「自分の手でコロナを断絶するしかない」と思いこんでしまったようだ。『abc.net.au』などが伝えている。
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スーパー経営者、3月に店を放火
西オーストラリア州東部にある小さな町ブルースロックにある1軒しかないスーパーマーケットが、3月25日の夜火災に見舞われた。
COVID-obsessed Bruce Rock supermarket owner burnt down his own business to 'keep customers safe' https://t.co/H7ATBZgK6R
— MSN NZ (@MSNNZ) July 30, 2020
店に火を放ったのは、スーパーの経営者エドワード・ガイ・メイソン(57歳)だった。
メイソンは、この日店内で3つの買い物カートに段ボールを詰め込み、火をつけた。そして火が広がる店を出たメイソンは、戸締りをしっかりとして、自宅へと向かった。この時、メイソンは命を絶つことを考えていたようだ。
店の炎に気付いた通行人が通報し、後にメイソンは逮捕となった。メイソンは、両親が50年続けて来たビジネスを引き継ぎ、28年間このスーパーを経営して来た。スーパーの隣には、メイソンの兄弟が開いている金物店があった。
しかし、メイソンの放火によりスーパーも金物店も100万オーストラリアドル(約7550万円)以上にのぼる大きな損害を生じてしまった。
なぜ、メイソンは店を放火してしまったのか。行われた裁判では、その内容が明らかになった。
買占め客と地元常連客に対する苦悩とウイルスへの脅迫概念
意図的に、または不法に建物に放火し損傷させた罪を認めただけでなく、放火前に8つの大麻入り水パイプを吸っていたことも明かしたメイソンの裁判が、パース裁判所で行われた。
裁判では、メイソンの精神状態が半年間不安定だったこと、コロナのパンデミックによりそれが更に悪化してしまったことが注目された。
メイソンは、町外の遠方から来る客が自分のスーパーで買占めを続けたために在庫が切れ、地元常連客から苦情を訴えられる日々に苦悩を感じていたという。
image credit:Allie/Usplash
また、顧客たちは店内に配置する商品の衛生管理についても不満を述べていたようだ。
そうした状況はメイソンの精神状態を悪化させ、自身がコロナに罹っていると思い込み、商品もコロナに汚染されていると信じ込むようになった。
「自分の手で、コロナを断絶するしかない」そう決意したメイソンは、国民と顧客を守るために店を焼き尽くすことを実行した。
買占め客や顧客に対する苦悩とウイルスへの脅迫概念によって放火を引き起こしたメイソンに対し、裁判官はメイソンが地域社会では住民らに愛され、尊敬される人物であると言及している17人の地元住民らの参考文献に降れ、次のように述べた。
地域住民は、被告の行為には大きなショックを受けている。だが、食料品店オーナーとして、被告はとてつもないプレッシャーを感じ、苦悩していたとみられる。
自らの店に放火した行為そのものや理由については深刻かつ異常だが、それらはパンデミックの影響を直接受けたことによるものだと言えるだろう。
12019/pixabay
禁固刑が執行猶予付きに変更に
当初の裁判では、メイソンは16か月の禁固刑を言い渡された。しかし、彼に前科がなかったことや既に4か月間の実刑を経て深く反省した様子だったことから、今回の裁判では減刑され、執行猶予の判決が言い渡された。
釈放となったメイソンには、裁判官から隣店に生じた損害に対する479000オーストラリアドル(約3600万円)の支払いが命じられた。
image credit:ABC News: Joanna Menagh
逮捕後、抗うつ剤の服用とカウンセリングにより、症状が落ち着いたメイソンは、裁判所の外でメディアの取材を受け、次のように心境を語った。
とても酷い状態だった、の一言です。自分の町のスーパーに商品がなくなると、車で30分もかかる私のスーパーに多くの人が押し寄せ、トイレットペーパーや除菌剤を大量に買占めて行きました。
空になった棚を見て、欲しいものが手に入らないと常連客からは怒りをぶつけられ、苦情が出ました。そこから全ての対立が始まってしまいました。
また、商品がどこから輸入されるのかというニュースを見る度、その商品や商品が梱包されている箱には、間違いなくコロナウイルスが付着しているだろうと思うようにもなり、もうなす術がないと思ってしまったのです。
最後にメイソンは、自分をサポートしてくれた地域住民へ深い感謝の気持ちを伝え、「また1から全てをやり直したい」と話した。
written by Scarlet / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
どこの世界にも迷惑な買い占め客はいるんだな…店主が可哀想
2. 匿名処理班
デットラの6番レジへどうぞ !を思い出した
3. 匿名処理班
店主に同情を感じる‥
4. 匿名処理班
常連客がクソだろ
5. 匿名処理班
自分の命も絶とうとしてたようだけど、実行しなくてよかった。
6. 匿名処理班
人間一皮むけばって奴だな
コロナ騒動が大事になった頃にEUでアジア人が暴行を受けたり
入店を断られたり罵声を浴びせかけられる事件が多発した
もちろん少なくない日本人も被害にあった
人権だの平等だの非差別だの謳うEUですら、ちょっとしたパニックで
こういう事をいとも簡単に平然と始めてしまう
7. 匿名処理班
真っ当で真面目な人間ほど、追い詰められたときに何をしでかすか分からない。
・・・と思ったけど、あちらでは大麻は真面目な人でもやるのが普通なのかしら?
裁判で、大麻の使用については何も取沙汰されないものなのかしら?
8. 匿名処理班
「お一人様につき商品一つまで」というのを徹底してれば、こんな事にはならなかったのでは?海外の店は買い占め客を、割りと野放しにするよね。
隣の兄弟の金物店は、火災保険に入ってなかったの?まあそれと罰金は、また別なんだけど。
何にせよこの経営者、人が良過ぎて精神的に追い詰められた感じがする。
9. 匿名処理班
コッチの小売店も心境は大差ないだろうな
転売ヤーは滅びろ
10. 匿名処理班
保険降りるのかな?
降りなかったら借金だけ背負ってやり直せないよね…