戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://karapaia.com/archives/52293721.html


ベテルギウス謎の減光の原因は、超新星爆発の前兆ではなく大量の塵の雲で覆われていた可能性 : カラパイア

ベテルギウス減光の原因は大量のプラズマによる塵の雲である可能性
ベテルギウス減光の原因を特定か?image by:ESO, ESA/Hubble, M. Kornmesser

 冬を代表する星座オリオン座の1等星「ベテルギウス」は、2019年秋頃から2020年初頭にかけて大きく陰り、もしや超新星になる前兆ではと話題になった。

 結局明るさを取り戻し、爆発はしなかったのだが、最近の観測によると、この謎の減光はベテルギウスの南半球から放出された大量のプラズマが冷却され、塵の雲を形成し、その結果、塵に隠されて減光がした可能性が濃厚であるそうだ。
スポンサードリンク

ベテルギウス減光のはじまり


 2019年12月、ベテルギウスの大幅な減光のニュースが報じられた。

 2020年2月までにはベテルギウス全体の光度が3分の2以上も低下し、その陰りは肉眼でも観測できるほどだった。

 このときの暗さは過去150年でもっとも暗く、今まさに超新星になろうとしているのではと全世界から注目された。



 だがその後、なぜかベテルギウスは再び輝きを取り戻し始めた




ベテルギウスの光は塵の雲で遮られていた


 最新の研究によると、2019年10月から11月にかけて、ベテルギウスから外側へ時速32万キロの速さで伸びる、熱せられた高密度の物質がハッブル宇宙望遠鏡によって観測されたという。

 さらにその翌月、地上にある望遠鏡によって、ベテルギウスの南半球が何かに光を遮られたかのように暗くなったことが確認された。

以前、ハッブル宇宙望遠鏡によってベテルギウスの表面にある熱対流セルが観測されましたが、2019年秋には、その大気を抜けて外へと噴出する高密度で超高温のプラズマが大量に検出されました

と、ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのアンドレア・デュプリー氏は説明する。

その物質はベテルギウスのいつもの光度の4倍も明るいものです。さらにその1か月後、星が暗くなるにつれて、南半球の一部が目立って陰っていることが分かりました。おそらくプラズマが冷えたことで塵の雲ができたのだと考えています。


0_e0
ベテルギウスの陰りの理由はプラズマ放出とそれに伴う塵の雲の形成による可能性を示した予測図。左2枚はベテルギウスからプラズマの塊が放出される様子、右2枚はプラズマから形成された塵の雲がベテルギウスを覆う様子
image credit:NASA, ESA, and E. Wheatley (STScI)

急速に物質を失いつつあるベテルギウス


 もう1つ、科学者を驚かせたのは、事前のモデル予測を裏切り、検出されたプラズマがベテルギウスの自転極から排出されていなかったことだ。

 ハッブル宇宙望遠鏡の観測によれば、そうした物質は表面のどこからでも噴出されることが示唆されているという。

 じつはベテルギウスは太陽の3000万倍もの速さで質量を失っているが、昨年からの活動のおかげで、南半球だけでも通常の2倍近くも物質が失われたという。例の陰りはベテルギウスにとっても普通ではなかったようだ。

 デュプリー氏によると、どんな星もそれを構成する物質を失っているのだという。しかし、それが徐々に進行するものなのか、何かきっかけがあって始まるのか、あるいはベテルギウスのように突然の現象で生じるものなのかは今のところ不明であるそうだ。

 分かっているのは、熱く明るい星ほど、物質を失ったときにそれが塵に変わり、大きく陰るということだ。ただし、ベテルギウスの場合、過去150年にわたりそうしたことは起きておらず、それがまたユニークな点とされていた。

1_e1
2019年3月から2020年2月にかけて、ハッブル宇宙望遠鏡が観測したスペクトルデータをプロットしたもの。2019年10月にマグネシウム排出の明るさが劇的に増大している。右上の白い円は、これが起きたベテルギウスの南半球を示す
image credit:NASA, ESA, A. Dupree (CfA), and E. Wheatley (STScI)

変光周期よりも1年早い減光


 スペインにあるステラ(STELLAr Activity Observatory)による補助的な観測では、ベテルギウスの脈動に合わせて生じる表面の速度変化が測定された。

 こうした脈動はさざ波を立たせて、それがプラズマの噴出につながった可能性もあるようだ。ただし、こうした脈動が減光と関係していることは間違いないものの、それだけであれほど大幅に陰ることはないだろうとも推測されている。

 今、ベルギウスは昼の時間帯に姿を見せるようになっており、ハッブルとSTELLAからは観測ができなくなっている。そこでバトンタッチされたNASAのSTEREOによる観測からは、さらなるサプライズがもたらされた――予想外の減光だ。

2_e1
NASAの太陽調査プロジェクトの人工衛星「STEREO」がとらえたベテルギウス(白い丸)
image credit: NASA/STEREO/HI

 STEREOは6月下旬から8月初旬にかけて計5日間ベテルギウスを観測し、その明るさを他の星との比較で計測。その結果、ベテルギウスは再び陰りつつあることが判明したのだ。

 この星の典型的な変光周期は420日だ。前回、一番暗かったのが今年2月なので、今回は1年以上も早く減光が起きているということになる。

4_e
2018年末から現在まで観測されたベテルギウスの光度。緑と青は地上の望遠鏡のデータ。星はSTEREOによるもの。プロットが途切れているのは、ベテルギウスの出現が昼の時間帯に入ったため
image credit:Dupree, et al.

やはり超新星の前兆なのか?


 暗くなればなるほど注目されるベテルギウスだが、デュプリー氏は、やはりこれは超新星になる前兆なのだと考えている。

ベテルギウスは天の川でも明るい星ですが、今その一生の終わりに近づき超新星になる可能性が高いでしょう。

星の爆発直前の挙動は誰にも分かりませんが、ベテルギウスが超新星になろうとしている不吉な前兆はあります。私たちが生きている間に起きないだろうとは思いますが、断言はできません

 ベテルギウスは地球から725光年離れている。したがって今私たちが見ているその姿は725年前の姿だ。はたしてこの星は今もそこに本当にあるのだろうか?

References:phys/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
恒星のベテルギウスに異変。急速に明るさが低下、超新星爆発の前兆か?


ベテルギウスが再び輝きを取り戻しつつある兆候。超新星爆発は免れたか?


シャアもびっくり!2022年、5年後に赤色新星が地球上の空を明るくすると天文家が予測(米研究)


太陽が死期に近づいたら起こりうるだろう10のこと


200万年前の超新星爆発が人類に影響を与えた可能性が示唆される(米研究)


我々の骨は宇宙由来。カルシウムたっぷりの超新星が放つX線の観測に初めて成功

この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 20:40
  • ID:QkL.DQ6.0 #

前まで距離が640光年なのに今はより正確に計測して725光年に修正されたのかな

2

2. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 20:43
  • ID:lTv1UpuX0 #

木枯し紋次郎「そんなもんでござんすよ・・御免なすって」

3

3. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 21:00
  • ID:.MPTIMFY0 #

今爆発しても、光年を経て届くから今生きてる人類には確認できないんだよね

4

4. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 21:24
  • ID:KSK5cBVV0 #

※3
既に超新星爆発している可能性は往々にして有るんだけどね。ひょっとしたら明日にも「観測」出来る可能性はある。

5

5. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 21:37
  • ID:BqfLlK.A0 #

※3
「今」は無意味。光速度分の遅延を含めた観測出来ている時点、だけで考えたほうがいいよ。

6

6. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 21:45
  • ID:FB6on3IK0 #

巨大黒点が原因って説も最近見たけど

7

7. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 22:43
  • ID:TC6YkdND0 #

その名を三回唱えると……

8

8. 匿名処理班

  • 2020年08月16日 23:40
  • ID:AGNHeVnv0 #

宇宙ヤバイ

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク