image by:Antonello Mulas of the University of Cagliari, Italy
底引き網で漁をしていた漁船によって、奇妙なサメの仲間が捕獲された。そのサメにはサメ肌の皮膚も歯もまったくなかったのである。
『Fish Biology』(7月16日付)に掲載された研究によると、このような個体が海で発見されたのは初めてのことであるそうだ。
スポンサードリンク
偶然発見された皮膚のないサメ
皮膚なしのサメが発見されたのは、2019年7月のこと。北西大西洋に分布するトラザメ科の仲間「クログチヤモリザメ」(学名 Galeus melastomus)のメスで、イタリア、サルディーニャ島付近で漁をしていた漁船によって、水深500メートルのところから引き上げられた。
軟骨魚であるサメにとって、皮膚は化学的・物理的なバリアだ。そこから分泌される粘液は、免疫系の最初の防衛ラインとして細菌などの侵入を防ぐ。
また、ざらざらとした触り心地を作り出す「皮歯」と呼ばれる歯のような構造は、捕食者や外部寄生虫を物理的にガードしてくれる。
ところが、そのサメにはそうした保護構造がまったくなかったのだ。カリアリ大学などのグループが解剖したところ、表皮も皮歯もなく、さらに歯までないことが明らかになった。
発見された皮膚のないクログチヤモリザメ
image credit:Antonello Mulas of the University of Cagliari, Italy
捕まえた時点では健康そうだった
皮膚が果たす大切な役割を考えれば、その欠如はサメにとって致命的であってもおかしくないはずなのだが、そのサメはしっかり成長して、一応は健康そうだったという。
クログチヤモリザメは、エサを丸ごと飲み込んでしまうので、歯がなくても食べられる。だから、その点心配はない。
だが、皮歯がないおかげで、普通ならあるはずの体の模様がなかったそうだ。
発見された皮膚のないクログチヤモリザメ
image credit:Antonello Mulas of the University of Cagliari, Italy
一般的なクログチヤモリザメ。ちゃんと皮膚がある。
image credit:Antonello Mulas of the University of Cagliari, Italy
なぜ皮膚がないのか?その原因は?
なぜこのクログチヤモリザメには皮膚がないのだろう?はっきりした原因はまだわかっていないが、遺伝的なものか、人為的なものか、そのどちらも考えられるようだ。
研究グループは、たとえば胚が発達する段階で、何らかの問題が生じた可能性を指摘している。
あるいは、化学的な汚染物質への長期的な暴露、温暖化による海水温の上昇、海洋の酸化といった人間が関係する可能性も挙げている。
急激に変化しつつある環境を鑑みるならば、原因を突き止め、こうした異常をきちんと解明することが海洋生物を保護する上で大切なことだと、研究グループは述べている。
References:standard / iflscience/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい
緑に光るサメのミステリーが解明される
人類の不老不死は実現するか?400年をも生きるオンデンサメの遺伝子を絶賛解析中
サメにも音楽の好みがある。ジャズが好き、クラッシックは良くわからない模様(オーストラリア研究)
サメなの?ウナギなの?それともアザラシ?様々な特徴を持つ謎の海洋生物がオーストラリアの海岸に打ち上げられる
サメと人間には4億4000万年前に共通の祖先が存在していた。3億8500万年前のサメから分岐時期が判明
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「水中生物」カテゴリの最新記事
「変形・変体生物」カテゴリの最新記事
この記事をシェア :
人気記事
最新週間ランキング
1位 3231 points | 盲目の犬が手術で光を取り戻す。飼い主を見た瞬間、全身で喜びを表現(スペイン) | |
2位 2973 points | ベージュ色のラブラドールの母犬から生まれた13匹の子犬は全部黒色!(イギリス) | |
3位 2701 points | 母犬、氾濫した川に取り残された残りの我が子を命がけで救い出す | |
4位 1646 points | 装着してレースができる巨大パワードスーツが誕生(カナダ) | |
5位 1522 points | もふもふ真っ白の別羊に変身!シャワーを浴びた羊のビフォア・アフター(羊カフェ) |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
突然変異の可能性もあるけど、ただの奇形じゃないかなぁ。
2. 匿名処理班
人間でいう外胚葉異形成症を患ってた個体なのかな
皮膚までないってのはさすがに人間ではないと思うが
3. 匿名処理班
歯は骨ではなくて皮膚から進化したものだそうだから
皮膚欠損異常(とでも言えばいいのか)で歯も無くなったのかな?
4. 匿名処理班
遺伝子異常で生まれた鮫が、異常が案外致命的でなかったので普通に生きてこれました
遺伝子異常の原因は人間の活動の結果かもしれません
要するにまだなにもわかってない段階なのね。これがもっとあちこちで起こりうる減少なら大量絶滅の主要因にもなりかねないし頑張って欲しいところ
5. 匿名処理班
馬鹿だと罵ってくれても良い
ありえないかもしれんけど、もしかしてコイツ脱皮するんじゃないか?
6. 匿名処理班
鮫の肌は骨片(だっけ?)でざらざらするように進化したんだが…鰓蓋も無いようだし。
脱Caを起こす環境因子とかじゃないといいが。
7. 匿名処理班
着替え中だった
いやんばかん
8. 匿名処理班
頭骨と鎖骨は皮歯が癒合してできた皮骨が起源だとか。がちがちに骨板で武装した板皮類がデボン紀の大量絶滅で滅び顎周りと皮歯だけ硬化した軟骨魚類が生き残ったのは生きるために必要な資源が少なくて済んだからだろうか。