戻る

このページは以下URLのキャッシュです
http://karapaia.com/archives/52254091.html


猛毒が渦巻く死の湖。海の底に沈む「海底の湖」の鮮明な映像(メキシコ湾) : カラパイア

海底の湖の映像

 湖といえば白鳥などが優雅に泳いでる湖畔のイメージが浮かぶものだが、なんと海の中には「海底の湖」と呼ばれる塩水溜まりがあるという。

 そこには通常よりも塩分が高いうえに有害なメタンなどを含む湧水が溜まっており、ひとたびそこに入った生物のほとんどが生きて出られない絶望的な領域でもある。

 海洋研究組織の探査船、ノーチラス号がメキシコ湾の深海で見つけた海底の湖の映像が公開されている。
スポンサードリンク

Brine Pool: Hot Tub of Despair | Nautilus Live

メキシコ湾海底で見つかった猛毒の「死の湖」


 この動画は2015年に海洋研究組織の探査船ノーチラス号がメキシコ湾海底でとらえた「海底の湖」の様子だ。

スクリーンショット-(288)
image credit:youtube

 この塩水の毒性は人間のみならず多くの生物を死に至らしめるほど強い。そのため不運にもこの湖に入ってしまいそのまま息絶える生物も多いという。

スクリーンショット-(314)
image credit:youtube

冷水湧出帯から湧き出る塩水が湖に


 今回のノーチラス号の目的は深海にある冷水湧出帯を探るというものだった。

 こうした領域は硫化水素やメタンなどの炭化水素に富んだ塩水が湧出する所で、熱水噴出口と区別するため「冷水」という言葉がついている。

湖のわきで湧出する有毒な塩水
スクリーンショット-(300)
image credit:youtube

 その冷水湧出帯には、海底深くに堆積する古い塩鉱床と作用し合い、塩分濃度が海水の4倍以上もある湧水が出る塩水湧出帯がいくつかある。

スクリーンショット-(311)
image credit:youtube

 その塩水は上層の海水よりもはるかに高密度で、非常に混合しにくい。こうした水が大きな塩水溜まりを形成するのだ。


有毒でもごく一部の生物が適応


 この領域は水深1000m近くで見つかったもので、円周約30m、深さ約3.6mほどだった。
 
 この環境はほとんどの生物にとって有害だが、周辺には湧き出るガスや化学物質をエネルギーに変換して適応したムラサキイガイやチューブワームなどが生息している。

 こうした極限環境でもごく一部の生物が適応しているのだ。

スクリーンショット-(287)
image credit:youtube

「絶望的なジャグジー」という異名も


 このあたりの海水温は4度ほどといわれているが、その塩水だまりは19度もある。その温度と多くの生命を奪う塩分濃度から「絶望的なジャグジー」「絶望的な温浴槽」と呼ぶ専門家もいる。

スクリーンショット-(308)
image credit:youtube

 ノーチラス号はこうした塩水だまりの形成過程やその変化、さらには周辺の生物の生態などを調べており、収集したデータを協力的な科学者に渡している。

深海でも驚異的な場所


 この塩水溜まりを研究したテンプル大学の生物学の準教授、エリック・コーデスは以下のように述べている。
 
 「そこは深海で最も驚異的な場所の1つと言えるでしょう。海底で湖、もしくは川のような流れが見えるんです」

 神秘的であると同時に多くの生物に有害な恐ろしい海中の湖。しかしこの湖は極限環境下で生きる生命の研究にうってつけな魅力的な場所といえるだろう。

追記(2020/10/01):2018年02月25日の記事を再送します。
References:sciencealert / wikipediaなど /written by D/ edited by parumo
あわせて読みたい
深海ファンタジー。海の最深部「超深海帯(ヘイダルゾーン)」に関する驚きの8つの事実


深海の境界線。水深8400メートルを境に魚がいなくなる、その謎に迫る。


深海は宇宙と同じくらい不思議と謎で満ち溢れている。まだ見ぬ生命体を探しに深海へGO!(アメリカ海洋地質学研究)


海の中に打ち上げられた大輪の花火!?花火のような深海クラゲの美しい映像


海の中はミステリアスに満ち溢れている!専門家を困惑させる15種の海洋生物


この記事に関連するキーワード

キーワードから記事を探す

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
この記事をシェア :    

人気記事

最新週間ランキング

1位
5101 points
犬を引き取りに来たら猫がついてきました。施設に出向いた女性に子猫が猛アピール(アメリカ)

犬を引き取りに来たら猫がついてきました。施設に出向いた女性に子猫が猛アピール(アメリカ)

2020年9月26日
2604806233
2位
3207 points
ベンガルキャットの「ばぁばですよ、はじめまして!」愛娘が産んだ孫たちと初めて対面するおばあちゃん猫

ベンガルキャットの「ばぁばですよ、はじめまして!」愛娘が産んだ孫たちと初めて対面するおばあちゃん猫

2020年9月24日
2962896015
3位
2855 points
保護施設で少年にロックオンして16年目。20歳となった猫と青年の絆は今も変わらずソウルメイト(アメリカ)

保護施設で少年にロックオンして16年目。20歳となった猫と青年の絆は今も変わらずソウルメイト(アメリカ)

2020年9月24日
1492672529
4位
2715 points
目撃者多数!上空で光を放ちながらホバリングする謎の円盤型飛行物体(アメリカ)

目撃者多数!上空で光を放ちながらホバリングする謎の円盤型飛行物体(アメリカ)

2020年9月26日
1312527552
5位
2322 points
自動車ディーラーに足しげく通い続けた野良犬、店に引き取られマスコット犬に(ブラジル)

自動車ディーラーに足しげく通い続けた野良犬、店に引き取られマスコット犬に(ブラジル)

2020年9月28日
1412163117
もっと読む
スポンサードリンク

Facebook

コメント

1

1. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 22:40
  • ID:5gMbhAqU0 #

カニ「なんという塩対応」

2

2. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 22:42
  • ID:3k4EYXs50 #

海の底に重い成分が沈殿している箇所があるわけだ。
窪地に二酸化炭素が溜まるように。

3

3. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:10
  • ID:x7OuB7Y70 #

ウッ‥苦シオ…

4

4. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:17
  • ID:01G2vjxp0 #

やっぱり海は未だ未だ謎に満ちてんだなぁ

5

5. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:32
  • ID:RvnJ9j0y0 #

海の中とは思えない透明度の高さ

6

6. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:39
  • ID:pdO8vIj90 #

『ナウシカ』の腐海にも適用した虫ってところかな?

7

7. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:52
  • ID:5HPRag880 #

こういうところで死んだ生物は保存状態が良いから綺麗な化石として残りそう

8

8. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:53
  • ID:DJSFAYcJ0 #

潜水艇のネーミングを担当した人はロマンを理解してる人に違いあるまい

9

9. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:53
  • ID:L5UQZjgA0 #

カニを分解する生き物もいないからそのまま石みたいになっちゃうのかに?

10

10. 匿名処理班

  • 2018年02月25日 23:58
  • ID:gNHUZduQ0 #

相変わらずチューブワームはすげえな

11

11. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:02
  • ID:7Lroq8.V0 #

東京湾などで聞かれた青潮もこんな感じだろうね。
青潮の場合は浚渫ホールに溜まった無酸素海水で、それが海水温の変化などでホールの海水と入れ替わった時に、無酸素海水が生物を死に至らしめる現象。

12

12. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:11
  • ID:wkGRFKPV0 #

トライポとしてはチューブワームとムラサキガイの群れがガガ…orz
思わず早送りしちまったが、深海ってスゲーミステリアス…カニそのままで…

13

13. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:16
  • ID:7mrMu0Rf0 #

青潮の原因も似た現象、工事などで10m弱くらい海底を掘り下げると、そこが無酸素状態になり硫黄を利用する細菌の住処となる。
このままならトラップだが、海が荒れてここまでうねりが入ると、溜まった淀み水が巻き上がり、青潮となり多くの生物を殺す。
海の深さや水の流れで、もっと浅い穴で起こる事も多く問題になっている。

14

14. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:24
  • ID:WGg4Etwq0 #

そこに適合したら逆に普通の海水が毒になったりしないのかな

15

15. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:38
  • ID:n.BXC1KV0 #

「絶望的な混浴層」ってオッサンとお婆さんしかいなさそう

16

16. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:39
  • ID:ZyktWr1t0 #

「海洋研究組織」って随分抽象的な表現だと思ったら、国の機関ではないのか!
日本なら文科省管轄の海洋研究開発機構だよね?
スポンサーにNOAAや大学はついてるけど、寄付ベースで民間か。過酷だなぁ。(そうでもない?

17

17. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 00:51
  • ID:Fhh25FvN0 #

塵で見えないけど生物の死骸が相当の数積み重なってる気がする

18

18. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 02:07
  • ID:W.uYqQYx0 #

ワクワク出来そうな

19

19. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 05:00
  • ID:OVc2gWt.0 #

塩水の湧く周辺にチューブワーム等が住み着くことで壁状となり小さなプールが生まれ、それが長い月日をかけてどんどん巨大化していった訳か。

20

20. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 05:28
  • ID:6ZxZqCOd0 #

全然知らなかった
適応できる生物強いな

21

21. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 07:00
  • ID:3dTV4xlK0 #

過酷な環境下でもこうやって適応して生きる事ができる生物がいるのだから、やっぱり火星や木星なんかにも生物は存在しているように思う

22

22. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 08:48
  • ID:0Ns9.S4T0 #

※3
黒潮病患者はお帰り下さい

23

23. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 09:28
  • ID:i7OPGGcG0 #

探査するために無人艇がスクリューでかき回したらまずいことにならんか?
まぁそんなには拡散しないだろうけど

24

24. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 10:18
  • ID:GkUG6p.x0 #

通常の分解者も立ち入れない環境なのはわかるけど
なんでこんなにカニカニ地獄なんだろう。
ほかの死骸は1:45辺りでグソクさんっぽいのが
映ったぐらい…に見えてるだけなのかな。

25

25. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 11:08
  • ID:qX4wb3YR0 #

※19
それに加えて、周囲の冷たい海水に触れることによって析出した塩の壁もあるだろうね。

26

26. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 14:21
  • ID:rgRWP3y30 #

ええっと、猛毒ってつまり
「ものすごい濃い塩分」であってる?

27

27. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 15:08
  • ID:.ih2gOiZ0 #

適応する生物がいるのか

28

28. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 15:22
  • ID:YLPNE9sC0 #

遠くから見るとセノーテ・アンジェリータのような感じに見えるんだろか

29

29. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 17:04
  • ID:.txPEerp0 #

どんな水にも少量の毒が混じっている
100%澄んだ水はない。

30

30. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 18:16
  • ID:8SYgc5X.0 #

塩分濃度が濃いってことは、そこに入ろうとしても沈まないでプカプカ浮きそうじゃん?
でも海水温は高いから、言うほど浮かないってこと?
絶妙やねぇ

31

31. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 19:11
  • ID:oDC4WUDS0 #

※19 ※25
壁が先かチューブワームが先か、その辺はわからないけど、原文の雑誌を読むと壁の成分は重晶石(BaSO4:硫酸バリウム)で、赤い部分は鉄でしょうと。

32

32. 匿名処理班

  • 2018年02月26日 19:36
  • ID:oDC4WUDS0 #

※26
あってる。
Oceanographyの原文確認したけど、Jacuzzi of Despair,” in reference to its warm temperature (19°C) and high salt content—which can be fatal to many macrofauna unlucky enough to fall in" とあった。
塩自体は毒じゃないけど、塩分濃度があまりに高いと浸透圧で体内の水分が奪われてしまうからね。あとは、周辺に比べてむちゃくちゃ高い水温。16℃近くも高ければ、42℃の風呂の縁から足を滑らせて58℃の熱湯風呂に落ちたようなもので、ひとたまりもないでしょう。

33

33. 匿名処理班

  • 2018年02月27日 09:33
  • ID:giEgZB9M0 #

※32 識者、ありがとう!
しかもジャ「グ」じゃなくて「ク」なんだね。
そしてアクセントは「ジャ」じゃなくて「ク」なんだね!

34

34. 匿名処理班

  • 2018年02月27日 14:58
  • ID:giEgZB9M0 #

※33 コメ32です。Jacuzziの発音のことでした。

35

35.

  • 2018年02月27日 14:59
  • ID:giEgZB9M0 #
36

36. 匿名処理班

  • 2018年02月27日 15:13
  • ID:bYdO3.wn0 #

チューブワームというよりヒモムシに見える

37

37. 匿名処理班

  • 2018年02月27日 18:36
  • ID:giEgZB9M0 #

すみません、まちがえました。自分はコメ33です。
コメ26とコメ34も書きました。

38

38. 匿名処理班

  • 2018年03月03日 20:55
  • ID:tubyyimp0 #

誤解している人が多い様だけど、イガイやワームが高塩分の領域に適応しているのではなく、その周辺の通常、もしくは通常より少しだけ塩分濃度の高い領域に繁殖しているんだよ。流石に4倍の塩分濃度に適応できる高等動物(何を基準に高等と呼ぶかは置いておいて)はいないのかな。

39

39. 匿名処理班

  • 2018年04月30日 18:15
  • ID:ZF.gHSN10 #

こういう所に適応してる生物からしたら、数少ないオアシスなんだろうか

40

40. 匿名処理班

  • 2018年06月17日 23:40
  • ID:olSuE6.V0 #

先日TV番組で、ルーマニア死の猛毒湖を見たが、アレは酷いなんてものじゃなかった・・

ルーマニアのと同じ話かと思って読んだら、また訳が違った。
自然が作り上げたものなら、同じ猛毒でも折り合いが付くが、人工の産物なら言語道断。

41

41. 匿名処理班

  • 2020年10月01日 21:14
  • ID:o3kR6F3E0 #

※16
ここの動画一切広告出ないんだよね

お名前
スポンサードリンク
記事検索
月別アーカイブ
スマートフォン版
スマートフォン版QRコード
「カラパイア」で検索!!
スポンサードリンク