1974年から活動し、ニュー・ウェイヴの代表的グループとして大成功をおさめたバンド「ブロンディ」は1882年に一旦解散した(1997年に再結成)。
バンドのボーカルだったデボラ・ハリーは、独自にソロ活動を行っていたが、1981年に出したソロアルバム『予感(KooKoo)』のアルバムのジャケットをデザインし、プロモーションビデオを制作したのはなんと、あの映画『エイリアン』のクリーチャーデザイナーとして知られている、H. R. ギーガーだったのだ。
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H・R・ギーガーの手掛けたデボラ・ハリーのアルバム
1980年、デボラ・ハリー(以下デビー)と恋人のクリス・シュタインは、ニューヨークのハンセン・ギャラリーでギーガーに会っていた。
そのときのことを、ギーガーはこう語る。
すごい美人を紹介されたんだ。ブロンディのボーカルのデボラ・ハリーさ。カレ氏のクリス・シュタインも一緒だった。ぼくの作品を気に入ってくれたみたいで、最新アルバムのジャケットをデザインしてくれないかって頼んできた
ギーガーはジャズが好きだったので、ブロンディのことは知らなかったが、このオファーを引き受けた。
もしかしたら、このアルバムは中身よりもジャケットのほうがよく知られているかもしれない。デビーの顔を4本の串が水平に貫いているちょっと衝撃的なものだ。デビーは恍惚としているような、なんともいえない表情をしている。
ある意味これは、ギーガーのほかの有名なレコードジャケット路線に回帰している。
その代表作が、1973年に出たエマーソン・レイク・アンド・パーマーの『恐怖の頭脳改革』(Brain Salad Surgery)で、1987年の映画『ヘル・レイザー』にもその影響が見られる。
モダン・プリミティブムーブメントが起こり、デイヴィッド・クローネンバーグの代表作『ヴィデオドローム』(1982年)で、デビーが演じた暗くてマゾヒスティックなキャラクターが生まれる。80年代の退廃が花開いた感覚だ。
デビーはヘビーメタル誌にこのことについて書いている。「ギーガーの作品は意識下に訴えてくる力があるわ。金属に変えられてしまう恐怖を生み出すの」
『予感』のカバーは、危険をはらんだ不穏な感覚を呼び覚まし、プロモビデモもまたしかりだ。デビーのブロンドの髪は黒になり、皮をはがされた人間と機械が半々のボディスーツを着ている。
ビデオそのものはシンプルな作りだが、力強く魅力的なデビーは消え、昔ながらの気だるいゴシック風の雰囲気に変わっている。
Debbie Harry - Now I Know You Know.mp4
だが、音楽のほうは、ジャケットのデザインとはまるで合っていない。デビーがダニエル・ダックス(パンクバンドの女性ボーカリスト)に近いアルバムを目指していたのなら、80年代の音楽における、もっとも珍しい中途路線の変更を見られるかもしれない。
VIDEO - Debbie Harry - Backfired
商業的にはこのアルバムは成功しなかったが、ギーガーはデッド・ケネディーズやブラッドバスといったメタルやパンクバンドのアルバムを手がけ続けた。
References:dangerousmind / openculture/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
数年前のドキュメンタリーで
自宅の庭の鉄道模型ではしゃいでいる晩年のギーガーが何か妙に可愛らしいおじいちゃんだったなぁ
2. 匿名処理班
HRギーガーの画集・・・というかポストカード集?みたいなの厨房の頃にあこがれて買ったわ
どうあがいてもあの絵は書けんなあと思ったらあれ、エアブラシだったんだな
とはいえ、画力もセンスも何もないから結局書けなかっただろうけど