9000年前の女性ハンター(狩人)の墓を発見/iStock
先史時代における狩猟採集民の男女の役割は「男性は狩りを行い、女性は採集をしつつ、集落で家事や子育てを担う」というのが定説だった。
だが実際はそうでもないようだ。最近の研究では、そうした性別の役割は今ほどはっきりしていなかった可能性が示唆されている。
南米ペルーで発見された約9000年前(後期旧石器時代から新石器時代)の若い女性の遺体は、狩猟の道具と一緒に埋葬されていた。これは、大きな獲物を追いかけるハンター(狩人)の集団の中に女性も混じっていたということを裏付けるという。
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大昔、女性が狩りに参加していたという3つの理由
男は狩り、女は採集と家事や子育てというのが原始社会の一般的なイメージだが、実際に現存する狩猟採集民たちを見ると、女性が狩りに出ることはかなり珍しい。
しかし先史時代の狩猟採集民は男性だけでなく、女性や子供まで全員が狩りに参加していた可能性が高いという。『Science Advances』(11月4日付)に掲載された研究は次のように説明している。
まず人間は進化を通じて社会協力性を身に着け、自分の子供だけでなく、他人の子供も育てる傾向が身についているらしいことが挙げられる。
もしグループ全体で子供の面倒を見ていたのだとすれば、女性は育児から解放されて狩りに参加できるようになる。
2つ目の理由は、弓矢が発明される以前、狩猟採集民が「アトラトル」という槍を投擲する道具を利用していたことだ。
アトラトルは弓矢と比べて習熟が簡単だ。そのため女性は妊娠が可能な年齢になる以前からこれを使いこなし、狩りの戦力になることができる。
マサイ族によるアトラトルの投げ方 How to Throw a Spear Like a Real Maasai Warrior
習熟が簡単である一方、アトラトルは弓矢に比べて正確さや連射性能に劣る。
そうした性能の差異を補うには、できるだけ大勢が狩りに参加する方が望ましい。したがって女性も参加した方が合理的だ。
そして3つ目の理由は、初期の狩猟採集民が移動式の生活様式を営んでいたことだ。こうした生活様式は、女性もまた狩猟に参加するよう促すと考えられる。
じつはこれまでの常識とは違い、定住する集落を拠点として食料を探すよりも、大きな獲物を求めて移動を続ける生活様式の方が人口拡大に有利だったことが分かっている。その理由は、移動式生活の方が移動総距離が短くてすむからだ。
初期の狩猟採集民の人口増加率は、移動式生活から予測されるものと一致する。したがって当時の彼らは定住することなく暮らしていたのだろうと推測される。
image by:UC Davis IET Academic Technology Services
狩猟の道具と一緒に埋葬されていた女性の遺体
大昔は男だけでなく女も狩りに参加していたという見解はあくまで仮説だが、ペルーのアンデス山脈からはそれを裏付けるような証拠が発見された。
それはWilamaya Patjxaで発掘された9000年前の白骨6体のうちの1体の女性の遺骨である。
米カリフォルニア大学の考古学者ランドール・ハース氏らが、骨のサイズや形状、歯のエナメル(男女で含まれるタンパク質が異なる)を調べたところ、その遺骨は女性のもので、歯の状態からは、死亡時の年齢は17〜19歳だったと推定された。
その女性の遺骨の埋葬場所からは、大きな獲物を倒すための投槍の先端として利用された尖った石や、その皮をはぐ作業道具などの狩猟道具が発掘された。
また、この発掘現場では、タルカ(シカ科)やビクーニャ(ラクダ科)といった大型哺乳類の遺体も発見されており、この女性はおそらく優れたハンターだったと推測されている。
埋葬場所から発見された狩猟道具 image by:Randy Haas / UC Davis
いくつかの発掘現場が裏付ける、女性ハンターが一般的だった証拠
当時の狩猟採集社会において、女性ハンターはごく珍しい例外的な存在だったのか、それとも一般的だったのか確かめるために、ハース氏らは過去50年の間に調査された発掘現場の記録を調べた。
すると後期更新世から初期完新世の人間の遺体で、大型の獲物を狩るための道具と一緒に埋葬されていた27体のうち、11体が女性であることが明らかになったという。
こうしたことから、当時、女性ハンターは決して珍しくはなかっただろうことがうかがえる。だが、それならばなぜ過去の調査では、狩猟道具と一緒に埋葬されていた女性の遺体がハンターとみなされなかったのだろうか?
それについては、長い時間が経過するうちに地下に穴を掘るネズミなどが原因で、埋葬された道具が他の場所に移動してまったり、本来の副葬品でないものと混ざってしまったりすることがあるせいだと、ハース氏は説明している。
また以前は骨から性別を識別することが現在ほど簡単ではなかったことも関係があるようだ。
References:scitechdaily / phys/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
そりゃ例外なく女性は狩りをしてなかったということはないだろうさ
2. 匿名処理班
狩猟が主なら女性ハンターも合理的だわな
採取が加わると分担したほうが食料確保に役立つけど
3. 匿名処理班
現代よりも9000年前の方がジェンダーレスでフェミニズム的に正しい生活を営んでたんだなぁ
4. 匿名処理班
>男は狩り、女は採集と家事や子育てというのが原始社会の一般的なイメージ
自分はこういうイメージ無かったけど
本当に一般的なのだろうか?
子育てだろうが狩りだろうが、なるべく一緒にやってただろうと思ってた。
5. 匿名処理班
どこかに女性が狩りして男性が家事する部族が見付かってその頃からヒトはオスが狩りする生物って説は否定されてた気がする
6. 匿名処理班
先史時代の狩猟というとなんとなくマンモスやサーベルタイガーとガチで戦ってるイメージあるが、実際はメインの獲物は小動物や鳥類だろうし、小さな弓でも正確に射ることが出来るとか追跡能力とか捌くのが上手いとか、パワー以外が重要な時も多いから、女性の猟師も少なくなかったと思う。
7. 匿名処理班
ぱっと見「女性が男性狩り」と読んでひどくマヌケなことを想像してしまった
8. 匿名処理班
確かに、群れで生きる動物は雌も狩りに行きますね。というか、雄だけが狩りをする動物の方が思い浮かばないかも。
ヴァイキングにも女性がいたという話がありましたし、子供の頃からゲームの世界では慣れ親しんできた女戦士や女ハンターや女海賊が、実際にも存在していたのだと思うと胸熱。
9. 匿名処理班
時と場所を考えるとベーリング海峡を渡って以後数百年の南北アメリカ住民は総じて開拓者であって、向かう所全て人跡未踏地という状況では生活の必要上男女とも同じ役割が求められたんじゃなかろうか。
10. 匿名処理班
いや狩猟道具と一緒に埋葬されていたこと=狩猟をやっていたにはならんやろ。
なら古代の副葬品として剣や盾が入ってたら、そいつは必ず戦争に行った奴なのか?
古代の古墳なんて、女の墓でも剣や盾が副葬品として入ってることなんて珍しくない。
魔除けだったりとかあの世で食事に困らないようにという願掛けだったりとかの当時の宗教的な思想の可能性を排除出来ない以上、単なるポリコレ願望の混じった想像でしかないやん。
例えばその女性人骨に、狩りの際に出来たと思われる治癒した古い傷跡がいっぱいあったとかであれば多少の証拠にはなるだろうけど、それも無しで副葬品が入ってたってだけで決め付けるのはおかしいだろ。
11. 匿名処理班
自分がこの武器最初に知った時の名は
アトゥルアトゥルだったな。
原理で考えると威力はスゲー
12. 匿名処理班
インディアンの一例だと、狩を日常的に行う女性は
性同一障碍者(男性として扱われた)がほとんどだった
今回の発見は、そうした例とも異なるぽいよね
13. 匿名処理班
野生動物を見てても若いメスや子を持った母親だって普通に戦ったり狩や採食してるもんね
手先が器用で賢い旧人類だってしないわけがない
そりゃ女だって狩りもしたろうし戦いだってしたろう
現代日本の女だって働いて対価を得て帰ってくる狩人だよ
14. 匿名処理班
「男性が狩猟を行い、女性は子育てをしながらそれを待つ」というイメージが、原始時代のみならず、はるか以前の原人時代についても定番になっていますが(NHKの科学教養番組における再現CGなんて、全部そのパターン)、それ自体が、男性優位社会のバイアスがかかった、歪んだ物の見方かもしれませんね。
メスが狩りを行う生き物なんてふつうに存在するわけだから(ライオンなどはもっぱらメスが狩猟)、ことさらホモサピエンスの「メス」が狩りに参加しなかったという論理的根拠もないでしょう。
15. 匿名処理班
近代のイギリスが参加した戦争時にも女性が大活躍し
勲章を申請した記録があるし、先史時代にも狩りしても
何ら不思議ないよな
16. 匿名処理班
リアルハントレス!って思ったの絶対俺だけじゃない