ポルターガイスト/iStock
ドイツ語で"騒々しい霊"という意味の「ポルターガイスト」は、特定の場所で、誰もいないはずなのに物体の移動、物音、発光、発火などが繰り返し起こる現象のことだ。
同名の映画で有名になったが、実際のポスターガイスト現象は、かなり昔から記録されている。そのひとつが、1967年、ドイツ・バイエルン州の法律事務所で起こった事件で、今日に至るまでいまだに合理的な説明がつかず、議論が分かれる事件だ。
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法律事務所で起きたポルターガイスト現象
1967年秋、バイエルン州ローゼンハイムにある弁護士ジークムント・アダムの法律事務所で、とくに害はないが、おかしな現象が始まった。
電気が、ひとりでに消えたり、風もないのに揺れる。誰も触っていないのに、オフィスの機器が突然稼働したり切れたりする。そこに置いてあるはずの物が別の場所に移動していたり、知らないうちに中身がもれたり、こぼれたりする。
忙しいオフィスの中で、最初は些細なことと気にも留めなかったが、それが次第にエスカレートして、無視できなくなってきた。
ライトの電球がいつの間にかなくなっていたり、重たい家具が動き回ったり、机の引き出しがいきなり勝手に開いたり閉まったりし、壁をバンバン叩くような音が聞こえてきたりした。事務所じゅうの電球が全部、いきなりいっぺんに破裂したかと思うと、今度は電話の回線がおかしくなった。
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事務所の電話が一斉に鳴る怪奇
事務所の電話がいくつか一斉に鳴り出し、出ても電話の向こうには誰もいない。重要な会話をしている最中に突然電話が切れる。誰もそんなに電話を使っていないのに、法外な金額の請求書がきたりした。
電話会社に点検に来てもらっても、受話器が故障しているわけでもなく、原因はさっぱりわからず、ついにはオフィスの全部の電話機を取り換えてみたが、状況はなにも変わらなかった。
ほかの電気障害もあったため、技術者に来てもらったが、やはり原因がわからない。ただ、説明のつかない大きな電力サージが発生していたことがわかったが、近隣のほかのビルにはなんの影響もなく、説明がつかなかった。
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超常現象の専門家に依頼
ついに、ドイツの超心理学者が興味を示すようになり、超常現象研究会のハンス・ベンダーが調査に乗り出した。
ベンダーが電気系統をモニターする機器とカメラを事務所に設置したところ、すぐにさまざまな怪現象を彼自身が目撃することになった。
電気が勝手についたり消えたりする、大きなファイルキャビネットが床を移動する、フックにかかった額縁の絵がひとりでに揺れるなどだ。現象のいくつかはビデオに録画し、怪現象が起きているときにかなりの電力サージが計測できたという。
また、マックスプランク研究所のふたりの物理学者、フリードベルト・カーガーとゲルハルト・ジッカが調査に加わり、"未知のエネルギーが働いている"証拠を見つけたと、ベンダーは主張した。だが、それがいったいなんなのかは、はっきりしていない。
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ある女性の存在が浮上
調査を進めるうちに、ベンダーは一日のうちで怪現象が起きる時間帯が、いわゆる通常の勤務時間内であることを突き止めた。仕事が終わり、誰もいなくなった夜間や週末では、怪現象は起こっていないらしいことがわかったのだ。
どうやら、あるひとりの従業員に関係があるようだった。その人物は、この事務所で働き始めたばかりの19歳のアンヌマリー・シュナイダーという秘書だった。
彼女が部屋に入ってくると、電気がちらちら点滅したり揺れたりするのだ。彼女を面接してみたところ、個人的なトラウマや悩みを抱えていることがわかった。彼女は、婚約が破棄になった辛い体験をしていて、仕事への大きな不満も抱えていた。
シュナイダーが、無意識のうちにいわゆるサイコキネシス(念力)を起こしているのではないかと思われた。
これは胸の内にストレスを抱えている人が、自分でも知らないうちに、潜在意識下にあるパワーを外へと爆発させる力へと変える能力だと言われているもので、念じただけで物体を動かすことができるという。
彼女が数日、町を出ている間には、怪現象が起こらなかったのに、戻ってきたらまた始まったことからも、この説は裏づけられそうに思われた。1968年1月にシュナイダーが事務所を辞めると、怪現象はぴたりとやみ、二度と起こらなかったという。
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この女性がポルターガイスト現象を引き起こした可能性があるという考えは、べつに目新しいものではない。こうしたケースは、心に深いストレスを抱え、もやもやしている若者に見られることが多いようだ。
抑圧されたストレスや挫折感、不満がこうした念力パワーの引き金になって、外の物質世界に実質的な影響を及ぼす可能性があり、本人はそれにまったく気がついていない。
この仮説は、ポルターガイスト伝承に深く根づいていて、多くの超常現象研究家が、サイコキネシスがポルターガイスト現象の説明になると信じる風潮があった。
こうしたベンダーの推測は、超常現象の基準からいえば特にいかれたものではないが、もっと普通の手段で説明することもできるとも指摘されていて、必ずしもベンダーの説明が受け入れられて一件落着というわけではなかった可能性も十分にある。
ポルターガイストとの関連性を疑われた19歳の秘書、アンヌマリー・シュナイダー
間接的な証拠しかなく真相は不明のまま
現在、「ローゼンハイムのポルターガイスト」として知られるこの事件には、懐疑的な意見や穴がたくさんあり、ベンダーが提出した具体的な証拠ははほとんどない。
不可解なものが写った映像はいくつかあるが、決定的とされる現象は記録されていない。つまり、すべてが間接的な証拠でしかなく、ワイヤーなどを使ったトリックででっちあげられたものではないとまでは断言できない。
必ずしもベンダーが仕組んだことだとも言えず、注目されるため、あるいは仕事の不満を解消するためにシュナイダーがやったのかもしれないし、弁護士のアダムが自分の会社が話題になるためにでっちあげたのかもしれなかった。
また、ベンダーがほかの可能性を無視して、超常現象にばかり固執して、積極的に証拠を精査せずに、調査の結論を出してしまったことを批判された事実もある。
オランダのジャーナリストで懐疑主義者のピート・ハイン・ホーベンスは、科学調査との互換性がないと批判する。
この事件についての本を書くために、ベンダーが電気活動を測定した数値や目撃者の証言など、でたらめな証拠を提出したというのだ。物理学者のジョン・テイラーは、ローゼンハイムのポルターガイスト現象は、"期待と幻覚とペテンがミックスした事件"だと言っている。
懐疑的な意見も多いが、ベンダーがこの現象を誇張、でっちあげたという証拠もない。彼の報告のいくつかは、目撃者はもちろん、警察でさえも裏づけている。 シュナイダーも、これまでなにかを偽造したりしたことなどなく、誰かが明らかにでっちあげを行ったという証拠もない。
この事件は古くて新たな情報もなく、議論するには限界がある。わたしたちはただ、なにがここで起こったのだろうか?と疑問を投げかけるだけだ。
この現象は、幽霊のせいなのか、個人が発した霊的なエネルギーのせいなのか、単なるでっちあげ、ペテンなのだろうか? 今となってはその真実を知ることはおそらくないだろう。
完全に真相を究めることはできそうもない不可解なケースとして、ローゼンハイムのポルターガイスト事件は、今後も語り継がれていくことだろう。
References:The Bizarre and Frightening Case of the Rosenheim Poltergeist | Mysterious Universe/ written by konohazuku / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
正確な資料が残ってないということは捏ち上げだろう。証言者達は話題作りの為に買収されたか、或いは元々存在していないのではないか?
警察を買収?物理学者を買収?電子機器関連会社の社員も買収?捏ち上げならもっと関係者が少ないだろう。非実在証言者?そもそもこの捏ち上げで明確な利益を得た人間がいないじゃないか。超心理学者のベンダーが乗っかるのは理解できるが、弁護士のアダムが超常現象で話題作りなんて効果があるのか?
2つの相反する意見が脳内でぶつかりあう……
取り敢えず言える事はこの脳内意見反発によるポルターガイスト現象は今の所発生していないという事です
2. 匿名処理班
ポルターガイストのウィキペディア読むと、日本でも昔下働きに村娘がやってきてからポルターガイストが始まったって話が2つほどあったけど、案外本当に本人のストレスでなってたりしてね。日本のポルターガイストで有名な富加町の高畑住宅も結局一時期だけだったし、当時住んでた誰かのせいだったのかもな。
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