『ナツノカナタ』レビュー。読むローグライク、終末世界、JK、SFシナリオ、メタ視点、全部無料
2022年08月24日 20:00
↑こんな感じのゲームでした。
とりあえず、このゲームが無料で配布されているというのが意味不明です。
3000円、4000円ぐらいのクオリティがありますし、なんならフルプライス払っても満足できるレベル。
むしろ無料で配られると「なんで他のゲームを高い金出して買ってるのか」と疑問を感じだしてしまうので
ちゃんとお金を取って欲しいとすら思えるほどでした。
AUTOMATONのインタビューでユーザーが還元するには「ブログにレビュー書いてほしい」とあったので
さすがに申し訳なくなったので、この記事を書きました。
ですが今回記事を書くにあたって「まあでも無料ゲームだからな」で済ませちゃうと
マイナス面が全部目を瞑れてしまって、点数として120点ぐらいになってしまいます。
ですので「このゲームを7,800円で買ったつもり」で本気でレビューを書きたいと思います。
良い点
独特の世界観
どこか儚げな女子高生と青い空が広がる美しい世界だが、ちゃんとポストアポカリプス作品。
こんなでも、世界はちゃんと滅んでるし、いつ死ぬかわからない、必死に生き延びるためのサバイバル。
でも、それを匂わさないような綺麗なビジュアルと、それを覆い隠すような世界観が本当に独特のものを醸し出している。
ちゃんとパンデミックにより、人類は終末を迎えてるし、世界は死に溢れてる。
それでも登場人物たちはあまり生への必死さを表さない。
特に主人公でヒロインでもあるナツノは、ビジュアル通り、この終末世界をひょうひょうと生きている。
当たり前のようにこの終末世界に慣れ親しんで、ただなんとなく生き抜くために、旅をする。
その歪で独特な終末世界が本当に美しいと思った。
ビジュアルノベルのようなローグライク
ゲーム性としては、ゲームブックやTRPGのような、どこか懐かしいシステムで
文章ベースで進んでいく。ただやってることは思ったよりもローグライク的なもの。
探索で見つかるアイテムがランダムだったり、荷物がいっぱいになって整理したり
途中で武器を拾ったり、壊れたり、素材から道具を作ってダンジョンに持ち込んだり。
しかもこれを世界観が極力壊れないように、あまり数値で表していない点が素晴らしい。
斜め上を行かれる重めなSFシナリオ
このゲーム、パンデミックによるポストアポカリプス作品ではあるが、そっちへの掘り下げは、ほぼない。
予想外の方面に突き飛ばされるシナリオ。どちらかというとSF作品のような展開になっていく。
メタ視点的な飛躍の仕方をし、少しネタバレすると「信頼できない語り手」に近い形になってくる。
そこからはあまりにもむごい、グロテスクなオチへ変容していき、ゲーム性に絡んだ結末に帰結する。
だから終末世界モノだと思って進めていると「あれ!?そっち方面なの!?」と驚愕させられる。
正直、オチとなる「世界の真実」は鬱展開マイスターを自称する自分ですら呻るほど心苦しいものがあった。
悪い点
世界観、シナリオ、ゲーム性が喧嘩してる。
「良い点」であげた部分は、それぞれ個別に捉えると素晴らしいが、それがこのゲームの中に
一本の作品として綺麗に収まってるかと言われれば、疑問符が残ってしまう。
まず、この独特の世界観とローグライクのシステムが喧嘩していると感じた。
ナツノはひょうひょうと、淡々と、慣れ親しんだサバイバルを行っているが
プレイヤーはローグライクで苛烈なサバイバル生活を強いられる。
これはローグライクと終末世界の相性はいいのだが、世界観がそこの部分と乖離していると感じてしまった。
↑こんな感じ
要は、ナツノは慣れ親しんだ終末世界の生活かもしれないが、プレイヤーは全力で
もがきながら生きていく感覚でゲームをしなければならない。
ひょうひょうとしていて、落ち着いた世界観の裏で、プレイヤーだけが必死になってしまう。
世界観とキャラクターの乖離は心地よいものがあったが、キャラクターとゲーム性の乖離は
プレイしていて気持ち悪いものがあった。ナツノはどこまでも、なんとなくで旅をしているが
ゲーム性はどこまでも、終末世界のサバイバルを味合わなければならないのだ。
合ってないと思ってしまうシナリオ
良くもあり、悪くもあるシナリオ。実際に「面白い話」ではあるのだが、「このゲームに合う話」
ではないと感じてしまった。ポストアポカリプスから逸脱し、SF世界の壮大な話になってくる。
さらにはフィクションの否定。そこからたどり着くオチは、面白いが・・・
「このゲームで展開されるべきシナリオか?」という感想が頭をよぎってしまった。
壮大なSF展開とグロテスクな真実は、ポストアポカリプス作品を完全に、全くもって、
すべてがめちゃくちゃになるくらい、完璧に、なにもかもをひっくり返してしまったのだ。
良くも悪くも全てが乖離している作品
世界観、キャラクター、シナリオ、ゲーム性。どれをとっても素晴らしい出来ではあるが
それらを組み合わせると強い違和感があった。
しかし、よく考えれば、このレビューの最初は、世界観と女子高生のキャラクターの乖離が
素晴らしいと褒めていたのに、今こうしてまとめてみると、シナリオやゲーム性の乖離を否定している。
これは最初、インディーズゲーム特有のごちゃ混ぜ感の末路だと思っていたが
もしかすると、全てが乖離しているということそのものが、このゲームの良さなのかもしれない。
ここからはただの日記で雑記
綺麗なテラスで絶景に浸って、味の薄いインスタントコーヒーを飲みたかった。
雰囲気を楽しみたかっただけだった。
これはもう好みの問題なので、レビューとして読まないで欲しい。
ただこんなにも、味の濃いもので胃もたれするぐらいなら、望んだのは、まずいコーヒーだった。
このゲームは、1年前に早期アクセスが始まっていた。しかし、物語が完結していないのが
気持ち悪いので、フルリリースまで我慢した。結果、1年間このゲームを待ち焦がれていた。
想像していたのは、この美しい世界観から織りなされる、雰囲気だけの特に中身のないゲームだった。
雰囲気さえ良ければ、世界観さえ楽しめればそれでいい。他はなにもいらないとすら思う人間だったから。
まさか雰囲気だけのゲームが好きなんて人が多いとは思わないので、この感性の方がおかしいと思うが
それでも味が全然違うなら、白湯みたいなのが良かったなと思ってしまった。
でもレビューで白湯を望むのはおかしいと考え、結果「美味しいけど味が違う」みたいなレビューになってしまった。
これは好みの問題だ。以前書いた『じんるいのみなさまへ』のレビューと全く逆のことが起きた気がした。
でも、だからこそ、まずいコーヒーを望んだ人間ががっかりしたということは
普通に美味しいものを望む人には、良いゲームなのかもと感じた。
キャラクターエビソードが一番好き
ナツノが旅をしていると、時たま人に出会う。そしてその一時だけ、そのキャラと二人旅になる
個別の、いわばサブシナリオが展開される。
これがたまらなく好きだった。終末世界でちょっとした出会い。そして何気ない会話と、ちょっと真剣な話。
切なかったり寂しかったりする別れ。そこにはおおよそ滅んだ世界とは思えない
重大な出会いも、凄惨な別れもない。そういった旅路。
これが好きだったし、世界の真実とか全部どうでもいいから
これだけの旅路がしたかったなぁ。というのが個人の感想。
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この記事へのコメント
1. Posted by 名無しさん 2022年08月24日 21:02
これクッソ気なってたやつやん!
って衝動的に記事開いたけど、ネタバレ怖いから
ちゃんとプレイしたらこの記事また読みに来る
って衝動的に記事開いたけど、ネタバレ怖いから
ちゃんとプレイしたらこの記事また読みに来る
2. Posted by 名無しさん 2022年08月24日 21:50
たまにやる真面目レビューすこすこのすこ
※注意
ゲハに関連すること、ネガティブなこと、高圧的なコメントなど書き込み禁止です。
発見次第規制していきますので、何卒ご協力お願いいたします。
ぜひ頭空っぽで性欲まみれのアホみたいな書き込みを楽しみにしています。
※コメントを承認制にしました。管理人が確認後、公開します
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